藪の中

文字数 777文字

早朝4時だ。

 昨晩から今日にかけて、眠れなかった。夜中、ネットで繋がった女性とチャットをしていた。そこで喧嘩をしてしまって、私は順序立てて説明したつもりだったのだが。

 女性は説明しても分からないという事が多い。いや、そこに男女差はあるのだろうか。
 取り敢えず言えるのは、
女性は謝っても(ゆる)してくれない。その場限りの感情で怒っても損をするだけじゃないか。
 かく言う私もその場限りの感情で怒るのだが、今回は怒ったのでなく説明したのだ。説明して理解してくれる女性は、中々の場数を踏んできた女性だ。
 私も特段、今イライラしている訳ではない。ただ、しょぼんとね。
「なんでだよお」と「あ~あ」といったところか。

 昨日、隣りにお住いのオッチャンと珈琲を飲みながら世間話をしていた。私の夕食はパンであると言って、レトルトカレーを下さった。
「パンにつけて食べなさい」
 いやいや、私のは菓子パンだ。

「ご飯があるので」
 と、言うと

「ご飯があるぅう?」
「ありますよ。レトルトご飯」
 オッチャンは笑いながら
「うん、あるだな。レトルトご飯は、有る、だ」と言って
 ガハハと笑っていた。

 米は炊く、レトルトご飯は有るだ。なかなかにブラックジョークばかり飛ばすオッチャンも、この日ばかりは能天気なのか。

 今日は日曜日。仕事をしていないと曜日感覚を失う。昨日は金曜日かと思っていた。

 大体、昨日したことなんていうのは思い返してみないと思い浮かばない。

 400km程離れた場所に居る恩師と話していたとき、こんなことが自分の口から出た
「と…あれ?これ、さっきも言いましたよね?」
「はい、言いました。でも自分でそう言う人は初めてです」

 自分が何を言ったのか、覚えているのかいないのか。答えは「藪の中」である。

 いや、芥川龍之介作「藪の中」はそういう作品ではない。

 つまり「藪の中」である。
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