恋する乙女の手紙

文字数 602文字

 陽が指してきた。
 珈琲をしたためて、文章を記している。外は少し風がある。今日は乾燥していて寒い。家の猫を触って静電気が走った。

 先程、郵便物に切手を貼らないままポストに投函してしまった。「あっ」と気付いたときには、もう遅い。仕方なく、自宅へ返送されるのを待つしかない。自分で書いた重要書類を、自分宛てに出したようなものだ。

 これが例え1日でも、国民全員が切手を貼らないでポストに投函していたらどうだろう。まずニュースにはなる。どこか何かの陰謀(いんぼう)かと誰かが騒ぐかもしれない。国民一願となって自宅に届く郵便物は、配達員が届ける。

 郵便ジャーナリストに質問してみる
「こういった状況、まず山田さんとしてはどう見ますか」

「うーん。これはデモでしょうね。間接的に国民が何かを訴えているんでしょう」

「その何かが知りたいんです」

「確実なことは言えませんが、郵政民営化に対する国民の怒りのデモ活動かと見ています」

 何故今なのか。郵政民営化は15年以上前に政府が立ち上げたことである。15年越しのラブレター。それはご自宅へ返送。何で読んでくれないのだと淡い恋心。
 本当だ。胸がヤキモキする。返送待ちの私は恋する乙女である。

 この恋が成就するために神社に参拝したら、明日にも郵便物が返ってくるだろう。

 縁結びの神でなくとも、天照大御神(あまてらすおおみかみ)でも何の神でも良さそうだ。

 何の神でもいいので、早く返送してくれ。配達員さん、ごめんなさい。
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