第17話 「とまりぎ」近況報告

文字数 1,027文字

 一年前の春、とまりぎのビラをつくりました。そこには、不登校児に向けての場所、ということが書かれてありましたが、実際は、不登校児だけが来ている場所ではありません。
 六十何歳かのおじいちゃんがいらした日もありましたし、親の方もいらっしゃいます。開けば、どなたかがおみえになり、平均すれば参加者は四、五名、といったところです。
 このサボテン通信は、現在七十五名の方々に送っています。あちこちでいろんな方々と出会い、数だけは増えていきました。
 私にとってのとまりぎは、私の中の多くの矛盾のなかで、「矛」のようなものです。
 私のなかの「盾」は、何もしないのが一番いい、と言っているのですが、もうひとつの「矛」の方は、いや、何かやっておれよ、と私をせき立てます。
 不登校なり不登校後の生き方なり、それは、なんということもないと思っています。個人が、個人、あるいはその家庭、あるいはその周囲の人たちの中で、それぞれおのおの勝手にやっていればいい、何も私なんかが場所を開いて人を集めることはない、とほんとに思っています。
 それでもやってしまうのは、地域地域で、学校以外の子どもの居場所、会社以外の男の居場所、家以外の女の居場所が、あちこちにあればいい、と私が幻想を抱いているからです。

 私は一人でいると、または家庭の中にいると、なんとなくいやになってしまう人間のようです。でも、一人でいたい、家庭の中にいたいと思う人間でもあるようです。人は好きなのですが、人間関係はあまり得意でない、というのが、実際のところであるようです。
 そんな、人の好きさと、人との関係は面倒でキライ、という矛盾のなかで、生きています。
 とまりぎに、毎月誰も来なくても、私は開いていきます。誰が来る、誰が来ないは全く問題ではなく、人を一つの型にはめこもうとする場所以外の場所が、あちこちにできることで、大人の社会も、町の空気も、変わっていくと思うからです。
 先月から、Tさんの御好意に甘えて、K駅のすぐそばのビルの部屋を借り、これから毎月第四日曜のとまりぎは続けていきます。
 駅からほんとに近いので、助かっています。Tさん、ありがとうございます。
 季節は確実に春めいて艶めかしくなってきて、ヒトも確実に年をとっていくのですね。(先日、二十九歳になりました、どうでもいいですが)
 ウチのマミさん(いま四歳)も、とまりぎに来ていますので、小さなお子さん連れでも、ぜひ遊びにいらして下さい。
 それでは。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み