第153話 老い(3)

文字数 446文字

 だから寄り添うことができるんだが!
 ひとりひとりであればこそ!
 そこに美化を介入しちゃいけない… 醜化も! どんなに化かしてもいけない、そのままそのまま!
 「ある」だけなんだから!
 感受作用にすぎないんだから。
 ただそれはあるだけで… 「あった」とも言えるもの。残存記憶、それにお前が囚われているにすぎないこと…
 みんなが。ひと、って生き物に限り。
 たいしたものだ、人間様は。なんと小さいものだ、人間様は。
 大、中、小、いろどりみどり…
 その網膜、心にも網膜! 蜘蛛の巣みたいに念入りに。
 アメンボみたいに表面張力! 過信過信、あっぷあっぷ、水をはじくスネ毛は脱毛し!
 自分の出した糸にこんがらがって。トンボの嘲笑!
 それもお前のつくりだした世界だ。
 誰のせいでもないよ。ましてお前のせいでも!
 誰の、何の、ためでもせいでもない。
 お前は越えてきた、あっちの谷、こっちの山…
 よくやった! よくやってきた!
 それで充分じゃないか。なにをまだ…
 俺は敬っているよ、本当に。
 どうぞそのままで!
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