第64話 復興(1)

文字数 920文字

 もうあんなのはまっぴら、もう二度とあんな時代になっちゃいけない… やっと終わったんだ、やっと!この瓦礫の山… この残骸… 何にもなくなってしまった… うちの人は戻ってきたけれど… もう二度とあんなのは… 酷かった、でももう終わったんだ… やっと終わったんだ…
 四年三ヵ月! 数えたくもない… 長かった、でも終わったんだ、やっと! もう、あとは生きてくしかない… まったく、生きてくほかない… 生きてくしかない、ほかには何もいらないんだ… 近藤さんも森本さんも死んでしまった… 残った、残された者で、やってくしかない… ほかに、何もない、そうするしかないんだ… でももう、高いビルもつくるまい… ただでさえ大地が揺れるんだ… お高いものは崩れ落ちる… 竪穴住居が安全だ… 木の実は勝手に成ってくれる… 今まで食べ過ぎていたんだ… そんなに食べなくたって良かったんだ… この川の水は綺麗なはず… 火の起こし方… プロメテウスに教えてもらわなくたって… ああ、土を買い、肥料を買い、水を買い! おかしな話だった! わたしたちは殺されるようにできちゃいなかった! もう、あったんだ、充分だったんだ、これ以上を求めなくても!
 もうコンクリートでつくるまい… ブロック塀も… 土地なんて誰の物でもなかったんだ… 雨風しのげりゃいい… ダムなんて要らなかった… 山を削り、木々を大量に伐採したばっかりに… 何でも人の手で造ろうとしたばっかりに… もう何も造らなくていいんだ… 生きてりゃいいんだ… 残されたもの同士で… ひとりじゃ淋しいからな!… やってけない… 残されちまったもの同士で… 元に戻そうなんてするまい… 元が間違っていたんだ… 慣れ切った、あの生活が… あれが当たり前だった、コンビニがあってスマホがあったあんな生活、日常が! 元に戻せば、また同じことの繰り返しだ… ゴミばかり出す… 機械の言いなりになる… おかしかったんだ、あんな当たり前が… わたしたちは学んだんだ… 身をもって… 復興なんて糞くらえだ… あのクスの木より高い建物を造るまい… 金で買えないもの、しあわせなんて、物じゃないってことを… 学んだんだ、身をもって…
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