第16話 こっそりキスしとったやろ❓️

文字数 1,187文字

 急にドアが開いたと思うと、憲斗と茜さんが勢いよく中へなだれ込んで来た!
 キャッ、なんて言う間もなく、ただ呆気にとられていると、

「あれっ?ユウキちゃん、まだ入ってなかったん?
 オラ、憲斗、入るぞ!」

「おう!」

そう言って二人さっさと素っ裸になって浴室に消えていった。

 エッ、何、何??

全裸のまま突っ立っていると、

『憲斗とお風呂入んのなんて久しぶりやなぁ…』

『ほんまやなぁ、何年ぶりや…』

そんなやり取りが中から聞こえてきた。それから続けざまに、パシャーン!パシャーン!って、体を流す音が響いたかと思うと、

『ユウキちゃぁん!何してるん?早よ入っといでぇ!』

って茜さんの呼ぶ声。それで、あっ、はい!って、慌てて中へ入った。



 楽しかった…
 ついさっきまでのあのみっともないユウキちゃん、何だったんだろ…
 バカみたい…

 一時間以上入ってたかな…
 大の大人が三人も、小さな浴室にひしめき合って、肌触れ合いながらワイワイ大騒ぎしていた。若い男女の大きな笑い声が響き渡っていたので、隣近所の人たちは、何ごとかと驚いただろうね。

 一人が髪や体を洗っている間に、残りの二人が浴槽に浸かった。
 茜さんが髪を洗っている時に、憲斗と二人、湯船の中で、茜さんに気づかれないようにそっとキスを交わした。左肩に優しく手を添えながら体を引き寄せて、唇にキスしてくれた。

 その後、憲斗が髪を洗ってる間に、茜さんと湯船に浸かっていると

「ユウキちゃん、さっき、うちが髪洗ってる間にこっそりキスしとったやろ?ズルいわ!」

ってちょっと膨れっ面された。エッ!て思ってると…

「今度はウチとやで!」

なんて言われて

 エエエッッ!

 するとスウッと両手が伸びてきて頬を優しく包まれ、その柔らかい唇でキスされた。驚いたけれど、とても親しみのこもった女性らしいキスだった。
 クラッとするくらい素敵なキスだったので、今度は自分から、もう一度お願いします…っておねだりした。
 憲斗がいる真ぐ横で、実のお姉さんと素っ裸のまま…。考えてみるとちょっと(…かなり?)危険な匂いがするけど、こういうのも有りだと思います。とってもナチュラルな、女性が女性に対して親しみを込めてするキスを、愛情たっぷりにしてもらえたのでとても幸せな気分でした。

 最後は三人で湯船に浸かった。三人いっぺんに浸かったもんだから、浴槽からお湯が一気に音をたてて溢れ出た。のぼせてしまうくらい熱かったけれど、みんな浴槽から出ようともせず、肌と肌を触れ合わせながらワイワイ騒いでた。
 何を話していたのかも覚えていない。ただただ無性に楽しくて、みんなで笑い転げてた。笑う度に互いの肌が波打つように擦れ合ってくすぐったい。でも二人の肌のスベスベした感触は、お風呂から出た後もずっと肌に刻み込まれていた。

 お風呂から出て体を拭いている時、二人のさりげない思いやりにハタと気付きました…
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み