第6話 お風呂 楽しかったぁ…

文字数 1,194文字

 お風呂
 楽しかったぁ…
 みんなで入るお風呂がこんなに楽しいって思ったの、小学生のとき以来かもしれない。いっつも恐怖だったから…

 礼儀としてタオルで前をちゃんと隠すくらいの常識はあったけど、それ以外は何も気にしないで済むほど、めっちゃオープンに楽しめた。身体の話には触れちゃいけない…、そんな暗黙の了解すら無かったんだと思う。ごく自然な裸の触れ合いだけがそこにはあった。
 湯船に浸かっていると一年生たちが、ねえ、ねえ、ユウキ先輩、聞いてよ、聞いてよ…なんてワイワイ言いながら寄ってきて、いきなり腕掴んできたりするんで、柔らかい胸が肌に触れてドッキリ!…ってなこともあったけど、それでパオーン!(ごめんなさい…)なんてなる余裕も無いほど、みんなと夢中で喋ってた。

 一緒に湯船に浸かってる子たちも、湯煙の向こうに見える女の子たちも、驚くほどみんな綺麗。女の子の身体ってこんなに綺麗なんだ…って心底感動した。で、僕も女の身体なんだよ。だからやっぱ、みんなと同じで綺麗なんだ。

 今僕はこの上もなく幸福で、かけ替えのない時間を過ごしてる…、それを頭ではなく身体で感じ取っていた。
 この時間、過ぎてほしくないな…
 みんなと素っ裸でワイワイはしゃいでいるこの瞬間…、抱き締めたくなるほど愛おしい

 幸い、湯の幸福な一時を終えた後も楽しい時間は続いた。今度は男子も女子もお互いにいろんな部屋を渡り歩いて、お酒飲んだり、ゲームしたり、お喋りした。普段接点の少ない他の班の人たちともいっぱいお話できた。
 そんな中、僕がみんなと一緒にお風呂に、しかも女湯に入った話は瞬く間に知れ渡った。
 じゃあ明日はウチらと一緒に入ろうよ!って女性の先輩たちからもお誘いを受けた。ま、杏先輩からは、"ゲッ"なんて聞こえよがしに言われたけど、もうあの人のことは気にしないんだ。それに、そういう人がいるのは当然だと思うから。
 確かに気持ちはよく分かります。女湯に入るのが当たり前だなんて、全然思っていませんから。そんな簡単な…、そんな単純な話では無いことくらい、よく分かっています。
 でも、いろんな人にご厚意で誘って頂いたので、誘ってもらえる限りは、明日も明後日も一緒に入らせてもらおうと思います。感謝の気持ちでいっぱいです。だから僕も、こんな素敵な女性方のご厚意に応えるべく、礼儀だけはしっかり尽くそうと思います。せっかくの…、ホントにせっかくの機会ですから。

 だからジンのアホに、男湯に二人で入りましょうよ、って言われた時にはひっぱたいてやった。
 なんで男はこうなんだろ…。確かに僕も男なんだけどさ…。だからこそ、冗談でも言わないで欲しい。美優や女の子たちがどんな気持ちで僕を受け入れてくれたのか、よく考えて。
 たまたま居合わせた兵藤先輩が、そんなこと言っちゃダメだ!って叱ってくれた。
 ザマァ…
 それと兵藤先輩
 さすがです!
 
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み