第13話 ユウキと申します

文字数 1,119文字

 玄関のドアが、ガラガラッ…って開く音がして、続けざまに
 ただいま~!っていう女性たちの元気な声が聞こえてきた…

 ヤ、ヤバッ!!!

 大慌てで服着て、テーブルに戻って、必死に髪の毛整えて…
 憲斗も服着るの手伝ってくれたんだけど、それを終えると、笑っちゃうほどの勢いでテーブルに駆け戻っていった。それから平静装って、横向きに足組んで椅子に腰かけた。

 わたしは取り敢えずテーブルの脇に立ったまま、洋服のシワ伸ばしたり、前髪整えたりして、もう、必死!
 憲斗に、髪の毛変じゃない?…って哀れな目線を送ると、親指立ててOKの合図を返してくれたんだけど、ホントかな…。髪の毛、逆立ったりしてないかな。口紅の色、右と左で違ってたりしない?
 めっちゃ不安…

 ドアが開く
 ああ、もう、仕方ない…

「ただいま~!」

って明るい声の後に、お姉さんとお母さんが入ってきた。

「こんにちは!お邪魔してます!ユウキと申します…」

わたしも負けじと大きな声出してお辞儀した。すると…

「エエエエエッッ!!!」

て、二人抱き合ったままわたしを見つめた。これにはわたしもビックリ…

「う、う、嘘やん…!マジでぇ???」

二人とも目をまん丸にしてわたしを見つめている。

 えっ?えっ?わたし、髪の毛グシャグシャかな?何か顔に変なもの付いてるかな?…なんていろんなこと考えてアタフタしてたら、憲斗が横向いたまま、ボソッと

「失礼やろ…」

って、不機嫌そうに呟いた。すると…

「ご、ごめん…。そやかて、誰でもビビるで…」

って、お姉さんがペコッと頭を下げた。

「せやけど…、うっわぁ…、マジかぁ…、ヤッバ…、めちゃめちゃ可愛いやん…
 なあ、お母さん、これアカンやろ…。想定外もエエとこやん…」

「ほんまやなぁ…、憲斗、話盛ってなかったんやなぁ…、写真なんかどうせ加工やろて笑ろとったのになぁ…。加工の遥か上いっとるやん…」

「憲斗!!こないだの写真…、お前、

加工しとるやろ?お陰で油断しとったがな!言うてせいぜい中の上くらいが現れる思とったのに…、ガチでセンター張れるレベルやん…
 お母さん、嫌やぁ!こんなん、反則やでぇ…」

「別に反則やないけどな…。実力やん」

「せやかて、うちにどないせえ言うん?
 ユウキちゃんがセンターで賛成な人~?って聞かれて、ハーイ!って元気よく手上げてるしかないやん…」

「元気いっぱい手上げとき…
 せやけど、実力差見せつけたれ思とったら、余裕で実力思い知らされとるもんなぁ…、分かるわぁ…、茜の心中察するわ…」

「屈辱や…」

って二人、わたしを見つめながら不思議なやり取りを交わした。

 あの…
 これ、多分褒められてんだよね?

「茜…、お母さん悔しいけど、あんた負けたな…」

「勝てるかい!!!」




ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み