第13話 見る目ある

文字数 1,349文字

「あああ、行っちまった…。じゃ、俺たちも行くかぁ。」

 シオン先輩の声に、一堂ゾロゾロと移動し始めた。
 次の目的地は近くの広場。そこで最終日恒例のキャンプファイアが始まる。僕は4年生の先輩たちに囲まれて、アレコレからかわれたりしながら、ワイワイ楽しく歩いていた。
 すると突然、隣にいた舞台美術担当の渡辺先輩が、目の前をひなたちゃんと並んで歩く兵藤先輩に向かって、

「おい、兵藤!ちゃんと手つないであげなきゃダメじゃん!」

って、大声で叫んだ。
 えっ、て思ってたら、意外にも他の4年生たちも、一緒になって兵藤先輩をはやしたてた。女性の先輩たちまで。そしたらね…

 えええええっ!!
 マ、マジぃぃぃ??

 ホントに兵藤先輩、ひなちゃんの手を繋いだんだ。
 しかも、ひなちゃんまで手をしっかり握り返してる!おまけに、さっきよりもっと兵藤先輩の近くに寄り添って。

 みんな一斉に拍手と歓声。
 兵藤先輩とひなちゃん、めっちゃ照れてる…
 で、僕だけ唖然…

「えっ!なに?なに?なに?あの2人…
 どうしちゃったの?」

って驚いてたら、後ろから美優が、

「さっすが、ユウキ!いつもみんなより半歩遅れてるね!」

なんて言うもんだから、みんなに大笑いされた。
 何が何だか分からずに、えっ?えっ?…なんてアタフタしてたら、渡辺先輩に、

「ユウキ、お前、ホントに知らないの?」

って逆に驚かれた。

「お前、この2人のキューピット役じゃねえの?なんでお前だけ知らねえんだよ!」

って呆れられて、またみんなにヤイヤイ言われた。周りの4年生たちに頭ハタかれるしさ…

 もう、何が何だか分かんない!!!

 なんでもね…、前から2人とも僕の大ファンで(ま、それはよく知ってんだけど…)、よく僕の話で盛り上がってたんだって。ただ、直接のきっかけは、僕がサカキに"壁ドン"された例の一件だったみたい。あのとき、兵藤先輩が僕にとった態度を近くで見ていて、ひなちゃんがホレちゃったんだってさ。
 そう言や、次の日、ひなちゃんと一緒に炊事室にケーキ取りに行ったよね…。あんとき、兵藤先輩が、箱の中に

≪これ⬇、ユウキさんが楽しみにしてるから食べないで‼️≫

って、きったない字で書いてくれてたの、あれ、ひなちゃんも一緒に見てたもんね。

 そっかぁ…
 そうなんだ…
 ユウキ、知らないとこで、キューピット役やってたんだ…

 しかもさ、2人で手繋いで買い物してる時、たまたま憲斗にバッタリ出くわしたらしいの。で、そん時からひなちゃん、憲斗にもいろいろ相談するようになったんだって。今回の合宿で、2人が楽しそうに話してるとこよく見かけたけど、このこと話してたんだね。
 ったく、嬉しそうに憲斗の肩、叩いたりなんかしてさ…
 ちょっと、ひなちゃん!憲斗に馴れ馴れしくしないでよね!なんて思ってた。
 あはっ…、これじゃ、杏先輩と変わんないじゃんね。
 ヤバい、ヤバい…
 でも、これでひと安心なのだ。

 ただ…、みんな、教えてよね!
 それに、なに!2人揃ってユウキちゃんに断りもなく浮気しちゃってさ…
 許さないんだ…、特に、兵藤先輩!

 でも…
 やっぱ、いいよね…
 ひなちゃん、男の人、見る目ある。兵藤先輩、絶対にいいよ。きっと大事にしてくれる。ホントに素敵な人だよ。僕も大好き。
 とってもジェラシー覚えます…




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