第4話 いつもと雰囲気違う

文字数 1,109文字

 “憲斗攻略用“にって送ってくれた、お母さんイチ押しの例の洋服、ついに本日、憲斗攻略に向け…いやいや、お出かけ用にデビュー致します。ちょっと丈短いけど、割りと似合ってんじゃないかな…って自画自賛。ま、あの美優にお墨付きもらってるから、大丈夫だと思う。

 普段よりお化粧に時間をかけ、でもちょっと早めに約束の待合せ場所へと向かった。近くに着くと、また入念にお化粧のチェック。
 なぜだろ…
 いつも普通に話してる相手なのに、ドキドキ感が半端ない。これから舞台に上がるみたい。
 鏡の中のユウキ、めちゃ緊張してるの分かる。
 前髪整えたり、イーしたりしながら見つめ合った。
 うん、でも…、良い感じ!よし!
 お化粧の蓋を勢いよく閉じる。パチーン、と小気味良い音が辺りに響く。
 うん、良い感じ!自信持て!

 待合せは、クジラのオブジェがあるところ。憲斗はまだ来ていなかった。ちょっと早く着きすぎたかも。でも、いいんだ。最初から待つつもりで早く来たんだから。
 で、どうしてクジラなんだろ、イルカや亀さんじゃダメなのかな…なんて思いながら、興味津々でオブジェ眺めてた。
 うーん、でも、さすが!
 隣の女子高生たちの大阪弁も、とってもこの空間にマッチしている。可愛い。やっぱ、クジラじゃなきゃダメなんだよ!絶対クジラだよ!

 その時、メールが入ってきた。あれ?憲斗かな、って思ったら、美優だった。
 画面いっぱいに訳の分かんない絵文字が、ワラワラ点滅してる。ハートマークもいっぱい。
 ”今宵はお楽しみに~♥”
だってさ…。無理に決まってんじゃん!実家に泊まるのにさ。あったらビックリだよ…
 で、怒りのブーイングをいっぱい返しといた。
 すると…

「よう、ユウキ!」

って、後ろから声が聞こえてきたんだ。
 ドキッ、として振り返ると憲斗だった。
 思わず全力で手を振る。

 憲斗…

 なかなかイケてるね。シャツもズボンも夏っぽくてオシャレ!全体的に柔らかい色合いで明るい感じ。合宿の時とも、普段ともちょっと雰囲気違うな…って思ってたら、憲斗、マジマジと僕を見つめ、

「ユウキ、めっちゃ可愛いなぁ。それ、よう似合ってるわ。いつもと雰囲気違うやん。」

だってさ!

 エヘ…
 やったね!

「ありがとう。憲斗も良いね、その感じ。とっても好き!」

 お世辞じゃないんだ。ホントに素敵だなって思った。
 やっぱ、自分に会うためにオシャレしてきてくれるのって、嬉しい。
 暫し無言で見つめ合う。
 やっと口を開くと、なぜかお互いにチグハグな会話が交わされて、うまく噛み合わない。二人ともめっちゃ緊急してる。初めて出会うみたい。何か変な感じがするけど、新鮮で刺激的。
 今日は一日楽しくなりそうな予感。
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