第10話 予感的中

文字数 978文字

 キッチンとリビングが隣り合わせの広い部屋。真ん中に大っきな四角いダイニングテーブルがあって、椅子が四つ、寄り添うように並んでいる。

「ユウキ、疲れたやろ、ここ座って…」

そう言って憲斗は手前の椅子を引いてくれた。

「直ぐに帰って来ると思うけど、食事までもうちょい時間かかるから、これでも食べといて。ここのメッチャ美味しいねん…」

 出してくれたのはわらび餅。綺麗な薄いグリーンのお皿に、大好きなわらび餅が乗っていた。さすがだね…、わらび餅大好きなの知ってるもんね。
 ホント、至れり尽くせりだよ。直ぐに冷たいコーヒーまで持ってきてくれるし。感激。

「へえ、変わってる…、チョコかかってんだね」

「うん。これ、姉貴がメッチャはまってるねん。」

憲斗もお揃いのお皿を持ってくると、隣にそっと座った。触れそうなほど近くに。

「うん、美味しい!チョコがわらび餅の味をうまく引きたててる!へえっ…これはハマるよ…、お姉さんと気が合いそう!」

「マジで、気ぃ合うと思うで」

憲斗は嬉しそうに笑った。

 美味しい!

 でも、食べるのに夢中で、暫し無言。お皿が、カチャカチャ…小さな音をたてて部屋の空気を震わせる。その隙間を縫うように、古い壁時計の秒針が、カッチカッチカッチカッチ…規則的に時を刻んでいく。

「静かだね…」

「うん…」

 また沈黙
 時々肘と肘が触れ合う
 秒針の音がさっきより大きくなった気がする。いや、ホントに大っきくなったの!おまけに、秒針が刻む速さまでユックリになった。ホントだよ!

「美味しかった。ご馳走さまぁ!」

 合掌。
 立ち上がってお隣のキッチンにお皿を運んでいった。
 すると憲斗もお皿を持ってついて来た。
 何か…予感…

「それちょうだい、一緒に洗うね…」

「サンキュ…」

 受け取ったお皿を洗う。
 憲斗はなぜかそのまま隣に立たずんでいる。

 ん?憲斗、どうしたの?
 真横から憲斗の視線を感じる。

 でも、気付かない振りして無言でゴシゴシお皿を洗った。
 蛇口をキュッ…とひねって水を止める。
 興味ない振りして、わざと反対側向いて手を拭いた。

 すると…
 予感的中
 手を拭き終わって向きを変えようとした時、腕がスウッ…と伸びてきて、そのまま胸に吸い寄せられた。
 それからちょっと震える声で

「ユウキ、好きや…」

って言われた。

 あざといって思われるかもしれないけど、実はね…、このセリフも

 的中


 

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