第2話 この街で育ったんだね

文字数 1,070文字

 寝過ごした!
 京都!
 起きたら左手に五重塔が見えていた
 見る見る後ろへ遠ざかっていく

 あああ、またやっちゃった…
 名古屋から乗り換えた新幹線の中で気持ちよく眠ってた。ミーティング中に気持ちよく寝てる夢見てた。夢ん中で寝てたら、せっかく人が気持ちよく寝てんのに、シオンちゃんがうるさく何度も "起きろ!" って言うもんだからさ、"寝てないよ!"って逆ギレしたんだ。そしたらね…、目が覚めたの…

 ったく、シオンちゃん、役ん立たないなあ
 起こすんだったらちゃんと起こしてよね…
 京都過ぎちゃったじゃん…

 でも、まあ、いいや…
 もう夕方だし、京都観光する時間も無いから、今日は大阪に泊まろ。
 大阪って海見えるとこあるよね。海見たいんだ。あれ?京都にも海あったっけ?なんか、あったような気もするけど…、気のせいかな?
 でも、どうせならちょっとでも憲斗の傍にいたいから大阪にする。会うのは明日だけどね。

 それで、パパッと検索して、海沿いの比較的安くて良さげなホテルを予約した。こういう切り替えだけは早いんだ。



 大阪、初めて
 もちろん環状線に乗るのも
 明らかに山手線とは違う雰囲気だね。聞こえてくるのは関西弁ばかり。女子高生だってみんな関西弁!おまけにアナウンスまで関西弁!
 感動っ!!
 車内も、人も、外の景色も、どこか東京とは違う。ヘエ~って感心しながらキョロキョロしてた。
 
 あっ、この駅、憲斗ん家に行くとき乗り換えする駅だよね。アナウンスが、京阪

にお乗り換えの方はぁ…って言ってる。ってことは…
 ああ、あれだ!なんとかシャトーって!
 あれ、関西人ならみんな知ってんだよね?歌もみんな歌えるって。
 こないだ憲斗に、そんな歌知らないよって笑ったら、ウソお!知らんのお!!って絶叫された。僕も美優も、そんときの憲斗の "顔" にメチャびっくりした…

 ヘエ~ッ、でも、面白い。ホントに "シャトー" なんだね。スゴい建物!さすが大阪!東京には無いセンスだね。
 で、あそこってさ…、何する建物なの?



 ホテルヘ行くのにまた乗り換え
 夕方のラッシュの喧騒に揉まれながら、知らない町の通りを一人、次に乗る列車の駅を探し、さ迷っていた。時おり、ビルの谷間から西日が照りつける。赤く染まった遮光。その五線譜に、サンダルの音が軽快なリズムを刻み込んでいく。
 楽しい…
 もうちょっと彷徨ってたいな…
 このまま歩いてたら、どんな所に行き着くんだろ…
 耳に入ってくる関西弁が妙に心地よい。
 優しい響き。

 そっか…、憲斗やっぱ、この街で育ったんだね。分かるよ、とっても…

 
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