第3話 耳元に憲斗を感じながら
文字数 1,501文字
お風呂から出た後、椅子の上にあぐらかいて、大きな鏡を見ながらドライヤーで髪を乾かしていた。
上は半透明の白のキャミソールに、下は白の下着だけってな、あられもない姿で。
鏡を見つめながら、顔の角度変えたり、ちょっと表情変えたりしながら、向こうの世界の自分と睨めっこしていた。
こうやって見ると、あらためて女の子だよな…って思う。
スッピンなのに、なんでこんななんだろ…
胸、メチャちっちゃいけど、この膨らみ…
顔の輪郭、首筋や肩のラインだって、どう見たってさ…
4年生男子に大絶賛されたこの太ももなんて…
お風呂上がりなのに、ほんの少し口紅塗ってみた。それから、ちょこっとアイシャドー塗って、イヤリングもつけてみた。最後にはネックレスまで。
鏡の中の自分を見つめる。
うーん…
あぐらかいて、腕組んで、さらに身を乗り出して覗き込む。鏡の中のユウキちゃん、不思議そうな顔して見つめてる。お主、いったい何者?ってな顔して。
そんな時、携帯が鳴ったんだ。
憲斗からだった。さっき、"大阪の海沿いのホテルに泊まってるよ" ってメールしたから電話かけてくれたんだね。
鏡の中のヒト、めっちゃ嬉しそうな表情に変わる。
豹変。
ハローッ!って電話に出るや否や、「もう大阪来てたんやな!」って驚いたような声が返ってきた。京都で寝過ごしたの、って説明すると、さすがやな!って笑われた。
鏡の中のヒトも一緒に笑ってる。嬉しそうな顔して。
「悪かったな。せっかく大阪おるんやったら、今日もうちに泊まってもろたらええんやけど…。ただ、今日は来てもらわんで正解やったわ。ホンマ、ついさっきまでゴタゴタやったんよ。あんなんユウキに見せられへん…」
何があったんだろ…って思いつつ
「気にしないで。それよりさ、明日お邪魔して大丈夫なの?」
「明日は全然大丈夫やねん。みんな大歓迎や。予定変えてもろた上に、いらん気遣わせて悪かったな。姉貴も母親も、ユウキに会えるのメッチャ楽しみにしてるわ」
それから最後に、
「ユウキが来てくれたら、うちのドンヨリした空気も、だいぶ明るなるやろ…」
って、不思議なことを言った。
明日の待ち合わせ場所や時間を決めた。
必要なことを一通り話し終えると、じゃ、明日ね…、って言って切ろうとした。何となく、お家のことで忙しいような気がしたから。
そしたら逆に…
「いや、あの、ユウキ…、今、忙しい?」
って訊いてきたんだ。
もちろん、「ううん、全然!」って答えたよ。鏡の中のヒト、どう見ても忙しくない格好してるし。すると…
「もうちょっと話しててええかな?まだユウキと話してたいねんけど」
って行ってくれた。
当然、「いいよ!」って答えました。
鏡の中のヒト、ますます嬉しそうな表情に変わる。さらなる豹変。自分でも恥ずかしくなるくらい。
しかも、何?このあられもない姿は…
下着姿なのに、おめかしまでして…
自分でも見てらんないから、鏡台から離れて窓のそばの椅子に移った。イヤリングはずし、なぜか胸元のネックレスだけは着けたまま。
耳元に憲斗を感じながら、汗ばんだ首筋にかかるネックレスをしきりにいじり回していた。それをいじってないと、この手の動き、どうにも制御できない気がしたから。
普段と変わらない会話をしているのに、不思議と胸がドキドキする。裸足がソワソワして、無闇に膝やももを擦り合わせている。
何してんだろ…
息づかいまで荒くなってきて、それを勘づかれないようにするのに一苦労。首筋を汗が滴り落ちる。
窓の外に目をやる。
虚ろな視線の先に、漁船の灯りが霞んで見える。
耳元では相変わらず憲斗の優しい声が響いている。
上は半透明の白のキャミソールに、下は白の下着だけってな、あられもない姿で。
鏡を見つめながら、顔の角度変えたり、ちょっと表情変えたりしながら、向こうの世界の自分と睨めっこしていた。
こうやって見ると、あらためて女の子だよな…って思う。
スッピンなのに、なんでこんななんだろ…
胸、メチャちっちゃいけど、この膨らみ…
顔の輪郭、首筋や肩のラインだって、どう見たってさ…
4年生男子に大絶賛されたこの太ももなんて…
お風呂上がりなのに、ほんの少し口紅塗ってみた。それから、ちょこっとアイシャドー塗って、イヤリングもつけてみた。最後にはネックレスまで。
鏡の中の自分を見つめる。
うーん…
あぐらかいて、腕組んで、さらに身を乗り出して覗き込む。鏡の中のユウキちゃん、不思議そうな顔して見つめてる。お主、いったい何者?ってな顔して。
そんな時、携帯が鳴ったんだ。
憲斗からだった。さっき、"大阪の海沿いのホテルに泊まってるよ" ってメールしたから電話かけてくれたんだね。
鏡の中のヒト、めっちゃ嬉しそうな表情に変わる。
豹変。
ハローッ!って電話に出るや否や、「もう大阪来てたんやな!」って驚いたような声が返ってきた。京都で寝過ごしたの、って説明すると、さすがやな!って笑われた。
鏡の中のヒトも一緒に笑ってる。嬉しそうな顔して。
「悪かったな。せっかく大阪おるんやったら、今日もうちに泊まってもろたらええんやけど…。ただ、今日は来てもらわんで正解やったわ。ホンマ、ついさっきまでゴタゴタやったんよ。あんなんユウキに見せられへん…」
何があったんだろ…って思いつつ
「気にしないで。それよりさ、明日お邪魔して大丈夫なの?」
「明日は全然大丈夫やねん。みんな大歓迎や。予定変えてもろた上に、いらん気遣わせて悪かったな。姉貴も母親も、ユウキに会えるのメッチャ楽しみにしてるわ」
それから最後に、
「ユウキが来てくれたら、うちのドンヨリした空気も、だいぶ明るなるやろ…」
って、不思議なことを言った。
明日の待ち合わせ場所や時間を決めた。
必要なことを一通り話し終えると、じゃ、明日ね…、って言って切ろうとした。何となく、お家のことで忙しいような気がしたから。
そしたら逆に…
「いや、あの、ユウキ…、今、忙しい?」
って訊いてきたんだ。
もちろん、「ううん、全然!」って答えたよ。鏡の中のヒト、どう見ても忙しくない格好してるし。すると…
「もうちょっと話しててええかな?まだユウキと話してたいねんけど」
って行ってくれた。
当然、「いいよ!」って答えました。
鏡の中のヒト、ますます嬉しそうな表情に変わる。さらなる豹変。自分でも恥ずかしくなるくらい。
しかも、何?このあられもない姿は…
下着姿なのに、おめかしまでして…
自分でも見てらんないから、鏡台から離れて窓のそばの椅子に移った。イヤリングはずし、なぜか胸元のネックレスだけは着けたまま。
耳元に憲斗を感じながら、汗ばんだ首筋にかかるネックレスをしきりにいじり回していた。それをいじってないと、この手の動き、どうにも制御できない気がしたから。
普段と変わらない会話をしているのに、不思議と胸がドキドキする。裸足がソワソワして、無闇に膝やももを擦り合わせている。
何してんだろ…
息づかいまで荒くなってきて、それを勘づかれないようにするのに一苦労。首筋を汗が滴り落ちる。
窓の外に目をやる。
虚ろな視線の先に、漁船の灯りが霞んで見える。
耳元では相変わらず憲斗の優しい声が響いている。
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