第6話 憲斗お勧めのお店

文字数 1,372文字

「お腹空いたやろ?」

「うん…、空いた」

って答えたら、

「お店、予約してるねん」

って言ってくれた。

「ありがとう。嬉しいな!」

「ただ、ユウキに気に入ってもらえるかな…。オシャレと真逆のお店なんよ。せっかく大阪に来てもろたから、ありきたりのお店やなくて、大阪にしか無いお店がエエかなと思て…。それに、味は間違いなくメッチャ美味しいねん。」

 憲斗はよくお店に連れていってくれる。憲斗お勧めのお店はどこも良いお店ばかり。ハズレが無い、って、美優ともよく話題になる。

「憲斗お勧めのお店なんて、楽しみだなぁ!でもさあ、食べに行くんだったら、なんでお酒買ったのよ?」

そしたら、

「まあ、行けば分かるわ」

だって。

 で、住宅街の真っ只中、目的のお店に到着。
 あれっ?これ、裏口じゃないの?って思ったら入口だった。しかも、ホントにお店?っていうような、普通のお家みたいな外観。隣も前も普通の民家だし。
 でも、中へ入るとね、やっぱお店だった。しかも、若い女の子でいっぱい。
 お店のおばさんとは顔馴染みのようで、憲斗を見るなり、

「おう!ケンちゃん、久しぶりやなぁ。元気しとったか?今日はエラいベッピンさん連れとるやないか!」

だってさ!僕もそう言われて、こんにちは、ってご機嫌で挨拶した。

 “土間”で靴脱いで座敷に上がる。予約席の小っちゃなテーブルに座る。憲斗、わざわざ膝掛けまで用意してくれていて、はい、ってバッグからそれ出して渡してくれた。

「ありがとう」

 素敵なデザイン…。憲斗のお姉さんのかな。ありがたく使わせてもらいます。ちょっとスカートの丈、短いからね。
 なかなかできないことだよ。感心します…
 それからいろいろ注文してくれた。これも憲斗にお任せ。

 良い匂い…
 お腹空いた…
 早く来ないかな…
 そう思ってたら

「お待っとうさん!」

 直ぐにいろんな料理が運ばれてきた。
 美味しそう!
 料理が来るなり、憲斗は立ち上がって、近くの棚からお茶碗を取り出した。ん?って思ってたら、隣の大っきな炊飯器からご飯を注いで持ってきてくれた。どっちも大盛。

「うわあ、ありがとう!」

「おもろいやろ?このお店、お茶碗自分で出して、好きなだけご飯、勝手に注ぐねん。お代わりも自由やねん。
 お代わり遠慮せずに言うてや。俺、注ぎに行くから。」

そう言うと、今度は、さっき買ってきたお酒を袋から取り出して、それをコップに注ぎ始めた。

「お店のお茶は勝手に飲んでエエねんけど、それ以外飲み物無いねん。飲み物は持ち込み自由で、自分で買ってこなアカンねん」

「へえぇ~!面白いねぇ!」

 ホント、面白い。確かに、周りの女の子たちもみんな持ち込んでる。無くなったら、外に買い出しに行ってるもんね!ある意味、すんごい合理的。客からしても安上がりで済むよね。

「だったら、さっきのラッキョもオッケーかな?」

「アカンに決まっとるやろ!」

 そっか…、残念…
 じゃあ、ラッキョは憲斗ん家で食べよ

 食事、メッチャ美味しかったぁ。ラッキョいらないよ。あり得ないくらいニンニクたくさんだったけど、お陰でお酒も進むし、芋焼酎にチョー合ってるし!ご飯も山盛りお代わりできた。
 最っ高~!満足この上なし!

 今度、美優も連れて来たいなぁ…
 そう思った時、大好きな美優の立ち姿が、女の子たちが食べてるテーブルの片隅に、そっと浮かび上がりました…
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