第2話 半透明のアイドル

文字数 1,038文字

 廃校跡に放置されていた体育館、去年の夜はみんなで"肝試し"やってキャーキャー騒いだ場所なのに、ウソみたいに様変わりしている。現代アートのオブジェのような華やかな姿に変わり、内装もすっかり立派になってビックリ。今やイベントやコンサートに欠かせない町のシンボルになってるって話にも頷ける。確かにこれなら撮影に打ってつけだよね。

 でももっと驚いたことがある。それは大勢のギャラリーたち。
 去年妹役をやらせてもらった映画のラストシーン。僕も登場するクライマックスの場面では、この町の美しい風景が随所に散りばめられ、それが多くのメディアにも取り上げられた。町長さんから感謝状まで頂いた。
 そして再びこの町で撮影が行われる…その報せが先月、町の広報誌に大きく特集されたらしい。それを目にして集まってきたんだろうね。ほとんど地元の高校生じゃないかな。中にはちっちゃな子ども連れの親子もいるけど。
 で、お目当ては…

「おっ、みんな、ヒメをお待ちかねだよ」

 美優の言葉に、怯む間もなく、足を踏み入れるや、

 オオオオオッッ!!

ていう歓声とともに大きな拍手。
 ビックリして、ドギマギしながら、笑顔で(…苦笑して?)それに応えた。そしたらいきなり、"ユウキちゃぁん!!" って、女子高生たちの声援が聞こえたもんだから、慌てて声のする方に向かって手を振ったら、"カワイー!!" なんて大騒ぎされて、顔真っ赤。

「スゴォい!ユウキ、アイドルだね」

ってつっこむ美優に、言葉を返す余裕無し。マジ、顔まっ赤…
 でもさ、美優の方がずっと綺麗じゃんね…

 そんな中、

「じゃ、撮影始めまあす!」

っていうシオン先輩の声に、一堂ピリリ!
 カメラの前に座って号令かけるシオンちゃん、意外とカッコよし。
 僕もその声を合図に羽織っていたブルーのガウンを脱ぐ。そしたら、周りから、オオッ…ていう予想外のざわめきが起きた。それもちょっと囁くような感じの。
 直ぐに1年女子が撮影用の衣装を上から着せてくれたんだけど、半透明なんで全然足隠せない。かえってエロチックさが増す気がする…
 これデザインしたの聡美ちゃん
 聡美ちゃん、おとなしい顔して、意外と…

 しかも、一斉にスマホがこっち向いた気がするんだけど…
 ギャラリーの高校生たちだけじゃない
 ジン、お前も撮ってない?メッチャ足に向けてんじゃん!画面拡大してるだろ!!
 もう…4年生たちまで…
 おまけに美優やひなちゃんも、なぜに???
 えっ!コラッ、聡美ちゃん、あなたまで何やってんの!
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