第20話:京都議定書から米国の離脱、拉致被害者の帰国

文字数 1,567文字

 一方、共和党は、民主党との「党派対立」により徹底的に京都議定書に反対している。3月13日、ヘーゲル上院議員宛ての書簡で、火力発電所の二酸化炭素の排出を規制する選挙公約を撤回し、温暖化の科学に疑問を表明した。

 なお、中国、インドなどの途上国が参加していない不公平なもので、米国経済に悪影響を与える「京都議定書に反対」である旨も記述した。これに対して、各国から憂慮の意見や書簡が数多く提出された。

 EU代表国のスウェーデンを始めドイツ、デンマーク、フランス、オーストラリア、中国、EU外相会議が、国際機関では、トプファーUNEP事務局長、アナン国連事務総長、クタヤール気候変動枠組条約事務局長、更にプロンクCOP6議長、国際NGOも数々と意見書を発表した。また、川口順子環境大臣も記者会見で「残念」と述べた。

 そして、ホイットマン米環境保護局長官に書簡を送付した。そして3月28日、フライシャー報道官の記者会見によって京都議定書からの事実上の離脱を表明した。そこでは、大統領が、中国やインドを含む途上国を免除してある。これが、米国経済に深刻な影響を与え得るため京都議定書に対して反対していることを明らかにした。

 また、気候変動問題への取り組みについては、検討中であり京都議定書の署名を撤回するかを検討しているわけではない、と述べた。更に、大統領は、友好国と協力しつつ国際的なプロセスを通じて、気候変動問題を解決するための技術や市場原理に基づくインセンティブ、その他の創造的なアプローチを開発できると考えている事も表明。

 ブッシュ大統領の京都議定書離脱の発言により、各国政府・国際機関・NGOなどから批判が続出。アンブレラグループの加・豪、露なども非難した。しかし、「バード・ヘーゲル決議」から見ても分かるように、批准の可能性は署名当初から低く、ブッシュ大統領自身も選挙戦から反対の立場を明確にしてきたことを考えると、予期していた行動で当然の結果かもしれない。

 これで二酸化炭素最大排出国であるアメリカの離脱は、全世界に衝撃を与え、多くの批判を生んだ。このような批判にもブッシュは耳を傾けず、その後も経済優先主義的な行動を取り続けた。クリントン・ゴア政権はビジネス界の反対にもかかわらず、議定書を積極的に推進していた。そして2001年が終わり2002年を迎えた。

 この年は、食品業界の偽装問題から始まった。2002年1月に発覚した雪印食品に続き、ハム・ソーセージ最大手の日本ハムグループもBSE「牛海綿状脳症」対策事業で輸入牛肉を国産と偽って申請した事が8月、判明。さらに、政界の不祥事と続いた。「政治とカネ」をめぐるスキャンダルで有力国会議員の辞職が相次いだ。

 2002年3月に社民党の辻元清美氏、4月に加藤紘一元自民党幹事長、同5月に井上裕前参院議長が辞職。田中真紀子前外相も秘書給与流用疑惑で同8月に辞職に追い込まれた。鈴木宗男衆院議員が2002年6月19日、あっせん収賄容疑で逮捕。衆院は鈴木議員の逮捕を許諾したのに続き同21日には議員辞職勧告を決議。

 しかし同議員は辞職に応じず、11月の初公判では起訴内容を全面否認した。政界の不祥事と共に、日本経済も低迷を続けた。デフレ不況の進行に伴い、日経平均株価は2002年10月3日に、終値でバブル崩壊後の最安値を更新し、1983年以来19年ぶりに9000円を割り込んだ。

 しかし小泉首相が、外交で逆転ホームランを打った。小泉純一郎首相は2002年9月、日本の首相として初めて北朝鮮を訪問、平壌で金正日総書記と会談。金総書記は日本人拉致を謝罪。また北朝鮮側は「8人死亡・5人生存」との調査結果を示した。同10月には拉致被害者5人が帰国。この結果は、どう考えても素晴らしいの一語に尽きる。
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