第14話:京都議定書と1998年の出来事

文字数 1,652文字

 先進国の中にも、削減に積極的な国と、そうでない国の差が激しい。また、その国のトップが変わり、約束事が反故にされる可能性もはらんでいる点が、マイナスポイントだと語った。それに、積み残しの宿題もかなりの数にのぼっている。しかし、そういっても、関係者たちは、随分と頑張って、やったことは間違いない。

 また、今までの気候変動枠組条約締約国会議の中では、最高の結果を残したのは間違いないし今後の道筋は具体的に提言できた点は大いに評価できると言い、後は、各国がどれだけ守るかだと話した。この話を聞いて、富一は、父の今までの仕事を思い出して、自分も製薬企業の研究員で終わりたくないと言う気持ちが頭をもたげてきた。

 何かを残したいと言う、幕然とした強い欲求が、体を貫いた。金に余裕ができたた父みたいな、反骨の研究者になりたいと思い始めた。その後、1997年12月に京都で開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議「COP3、京都会議」では、先進国及び市場経済移行国の温室効果ガス排出の削減目的を定めた京都議定書が採択。

 この京都議定書は、21世紀以降、地球温暖化問題に対し人類が中長期的にどの様に取り組んでいくのかという道筋の第一歩が定められたものとして高く評価できる。しかし、京都議定書により地球温暖化が解決されるわけではない。

 50年、100年といった長期を見据えた全世界的な取組なしには解決することはできない。さらに、京都議定書には今後に解決を先送りされた課題を含んでおり、京都議定書に基づく行動を実施していくためにはこれらを解決することが必要。以下詳細をまとめると以下のようになった。

京都議定書の骨子
1.数量目的:対象ガスの種類及び基準年として二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素「1990年を基準年」HFC、PFC、SF6「1995年を基準年とすることができる」。
吸収源の扱い:土地利用の変化及び林業セクターにおける1990年以降の植林、再植林及び森林減少に限定。農業土壌、土地利用変化及び林業の詳細な扱いについては、議定書の第1回締約国会合あるいはそれ以降のできるかぎり早い時期に決定。

約束期間:第1期は、2008年から2012年の5年間。先進国及び市場経済移行国全体の目標、少なくとも5%削減。主要各国の削減率「全体を足し合わせると5.2%の削減」
日本が-6% 米国が-7% EUが-8% カナダが-6% ロシアが0% 豪州が+8%  NZが0% ノルウェーが+1%。

 次期約束期間への繰り越し「バンキング」容認。次期約束期間からの借り入れ「ボローイング」否認。共同達成、欧州共同体の様に複数の国が共同して数量目的を達成する事を容認。排出量取引:容認。締約国会合において、ガイドライン等を決定する。共同実施、先進国間の実施。

2.途上国の義務の実施の促進:途上国を含む全締約国の義務として、吸収源による吸収の強化、エネルギー効率の向上等詳細に例示。

3.クリーン開発メカニズム:先進国とのプロジェクトにより、途上国の持続可能な成長に資すると共に、右プロジェクトにより生じた温室効果ガス排出の削減を活用することにより、先進国の数量目的達成にも使えることとするもの。

4.資金メカニズム:条約で規定された資金メカニズム「GEF」が引き続きこの議定書の資金メカニズムであることを確認。

5.発効要件:議定書を締結した国数が55カ国以上であり、且つ締結した附属書Ⅰ国の1990年におけるCO2の排出量が同年における附属書Ⅰ国によるCO2の総排出量の55%を越える事を発効要件として規定。

 欧州連合「EU」は1998年5月、ブリュッセルで開いた特別首脳会議で、1999年1月1日にスタートする欧州通貨統合への最初の加盟国、独仏伊を含む11カ国を決定。これで、欧州経済共同体の発足をうたったローマ条約「1957年3月調印」の41年後、新たな経済活性化に向けて動き出した。同じ頃、インドとパキスタンは5月に相次いで地下核実験を実施。
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