第28話:異常気象、尖閣問題とIS問題

文字数 1,790文字

 原子炉で溶けた核燃料を冷やした水は、汚染水となって増え続け、貯蔵用の地下貯水槽では4月、遮水シートから汚染水が漏出。継ぎ目をボルトで締めた簡易型タンクからも漏れた。原子炉建屋に近い海側の井戸では地下水から高濃度の放射性物質が検出。一方、4号機使用済み燃料プールでは11月、核燃料の取り出しが始まった。

 その後、2013年、日本列島は、台風や大雨の影響で、各地で土砂崩れや増水などの被害が多かった。東京・伊豆大島で2013年10月16日に起きた台風26号に伴う大規模な土石流災害では、35人が死亡、4人が行方不明。大島町はこの際、住民に避難勧告を出しておらず対応に批判が集中。

 9月16日に上陸した大型の台風18号は西日本から東北にかけ広範囲で被害を与えた。台風26号の上陸を控え、気象庁は8月30日から運用を開始した特別警報を京都、滋賀、福井の3府県に初めて出した。この他、夏以降の豪雨による土砂災害などで山口、島根、秋田、岩手各県で死者が出た。世界でも、異常気象による大災害が発生。

 2013年11月8日、フィリピン中部を超大型の台風30号「ハイエン」が直撃。甚大な被害を出した。死者と行方不明者は合わせて7500人を超え、被災者総数は1220万人を上回った。日本はフィリピンの被災地に自衛隊員約1180人を投入し物資輸送や医療・防疫など国際緊急援助としては過去最大規模の活動を展開した。

 米軍も空母「ジョージ・ワシントン」を派遣するなど、多くの国や団体が支援に当たった。日中関係では沖縄県・尖閣諸島の問題が深い影を落とした。1月には中国海軍のフリゲート艦が東シナ海で海上自衛隊の護衛艦に射撃管制用レーダーを照射。中国公船の領海侵犯も常態化。11月になり中国は東シナ海に防空識別圏を設定、対立の度を強めた。

 中国政府が11月23日、沖縄県・尖閣諸島を含む東シナ海に「防空識別圏」を設定。この圏内で国防省の指令に従わない航空機には「武力で防御的な緊急措置」を取ると警告した。日本政府は「わが国固有の領土を含み、全く受け入れられない」と抗議。ケリー米国務長官も「東シナ海の現状を変えようとする一方的な行動だ」と非難。

 中国の狙いは、強硬措置で緊張をあおり、尖閣問題で日本に交渉を迫ることにあるとみられた。 その他、北朝鮮は2013年12月12日、金正恩第1書記の「後見人」と呼ばれた実力者の張成沢前国防委員会副委員長がクーデターを企てたとして「国家転覆陰謀行為」により特別軍事裁判で死刑判決を下し即日執行。張氏は金第1書記の義理の叔父。

 北朝鮮で指導者の親類が処刑されるのは異例だ。金第1書記は今後も張氏一派の粛清を続け独裁体制の強化した。2015年になるとウクライナで2月に親ロシア派のヤヌコビッチ政権が反政権デモで崩壊。親EU派政権が発足して、ロシア系住民が多数を占める南部クリミア半島にロシアが軍事介入し、3月に編入を強行。

 武力を背景に領土拡大を強行したロシアの行動をみて冷戦後の国際秩序は大きく揺さぶられた。 その後ウクライナ東部で親ロ派武装勢力と政府軍が激しい戦闘を続いた。それによる死者は4千人を超えた。7月には東部上空でマレーシア機が撃墜され298人が死亡する悲劇も起きた。欧米や日本は、ロシアが事態収拾に応じていないとして制裁を発動。

 イスラム過激組織「イラク・シリアのイスラム国」が6月、イラク第2の都市モスルを制圧。指導者のバグダディ容疑者をカリフ「預言者ムハンマドの後継者」とする「イスラム国」の樹立を宣言。シリア内戦でアサド政権の統治が、及ばない北東部やイラクの北西部で活動し少数派や他宗派の迫害などの残虐行為を続けた。

 米軍は8月、イラク領内でイスラム国を標的とした空爆を開始。オバマ政権は有志連合を形成し、9月に開始したシリア空爆にはサウジアラビアなどの中東諸国も参加。イスラム国は3万人超の戦闘員がいるとみられ壊滅に時間がかかると予想された。

 2014年8月20日、広島市北部で豪雨に伴う土石流が複数箇所で起き、多数の住宅が流出。未明の発生で被害実態がすぐに把握できず断続的に降り続いた雨のため捜索も難航。最終的には安佐南区の八木、緑井の2地区を中心に死者は74人に達した。避難指示・勧告は一時15万人以上に出され、全面解除までに3カ月もかかった。
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