第３話：新婚旅行と出産と引っ越し

　その後、多くの曲を聞き終えると３ステージを終えると０時を過ぎ、薄井富一と百合さんは、慌てて、タクシーでホテルに帰った。ちなみに２時が公演終了時間だった。これで日頃のストレスが解消された気がした。ホテルに戻り冷えたビールを飲むと、すぐ床に入り眠りに落ちた。翌朝９時に起きて、ゆっくり朝食して１０時半にホテルからタクシーで首里城へ向かった。

　そして、酒を抜こうと、お城に通じる道を歩き、いくつかの門を潜り抜け階段を上がると、汗びっしょり。完全に酒が抜け、城壁の高い台に上ると、素晴らしい景色が待っていた。多くの写真を撮って、室内の展示品を観察して、１時間ほどで、首里城を出た。その後、首里城近くの沖縄そばの店に入って、ダシのきいた、美味しい沖縄そばを食べ、ゆっくりした。

タクシーで近くの牧志公設市場に入り、豚の頭を見たり、色鮮やかな熱帯魚の大きいような魚を観察。しかし、食欲がわかないので、一回りして出た。やっぱり、リウボウの方が良いわと奥さんが言うので、タクシーで、向い、珈琲とケーキセットを食べ、ゆっくり話をした。沖縄は、日本と言う感じがしないねと彼女が言った。

　でも日本もアメリカナイズしてるのであまり違和感わないと笑った。ケントスは、最高だったをと言い、また、ケントスで、今度は、沖縄の若者と一緒に踊りたいものだと、彼女も薄井も思った。そして、この日の夜もステーキハウスに入って、安くてうまいビーフステーキを食べて、ビールを飲んで、２０時過ぎにホテルに帰り、明日、帰り用意をした。

　シャワーを浴び、那覇の最後の夜を夫婦で、お互いの体を温めあい仲良くしてから眠りに落ちた。翌朝、７時に起きて８時にチェックアウト。タクシーで那覇空港へ１０時過ぎの飛行機で羽田に１３時前に到着。１４時に、東京のマンションに帰り、母に、お土産を渡した。夕飯の時に、百合さんが、那覇旅行の話をして、ケントスと言うディスコが良かったと語った。

すると義理の母が、東京にも、あるわよと教えてくれた。１９８４年１１月３０日、早朝、彼女の父、吉村教一さんから電話で三菱商事が買いだと言われ４７０円で３千株で買いを入れた。その晩、１４１万円で３千株買えたと言い、残金が５９万円と話した。やがて１９８５年となり、結婚後、最初の年、初詣に行き、夫婦円満と健康を祈願してきた。

　その後、少しずつ、春めいてきた１９８５年３月２０日の朝、出勤しようとした百合さんが気持ちが悪いと言い出すと、母が、もしや妊娠かもと言い、富一と３人でタクシーで、産婦人科へ行くと、妊娠と判明し、出産予定日は、９月２７日と告げられた。その日は、休みをとって、３人で過ごしたが、母が、嬉しそうに、孫の顔を見れるのかーと宙を見た。

　やがて、目に涙を浮かべ、うれしいと、ひとしきり泣くと、百合さんとも富一の目にも涙が浮かび、百合さんは、感激のあまり大泣きした。富一は、彼らを見て子供ができるって、すごい事なのだなと、改めて考えると、涙が止まらなかった。きっと自分の両親も自分が、生まれた時には、感動したのだろうと思った。

　すると女性たちは、気分を切り替え、お茶を入れてきた。そして、既に、東京大学に出かけた、父、薄井淳一に電話し、子供ができた事を伝えると、電話口で、大声で、でかした、富一と怒鳴った。その晩、父は、越乃寒梅の１升瓶を引っ提げて、祝杯をあげようと言い、母と富一と乾杯し、奥さんは、水杯で乾杯した。

　酒が入り、生まれてくる子供が、男に子なら、賢一と名付けようと語った。もし、女の子なら、幸せになってほしいから、幸子なんてどうかなと言うと、母が、ありきたりな名前ねと、ケチをつけ、名前は、子供たちに決めさせましょうと言うと、まーそうだなと言い、笑った。こんな、うれしそうな父の顔を見るのは、滅多にない事だった。

　子供って、やっぱり、すごいなと、つくづく、感心した。すると、百合さんが、産むのは、私で、大変なのよ、だから、大事にしてくださいと、大きな声で言うと、母が、すっかり逞しくなったわねとと言った。そして、母は、強しで、良いのよと彼女の肩をたたいた。