元・空手バックパッカー VS たこ焼き少年

文字数 959文字

 タカの攻撃に対して張ったヤマが完全にはずれた今となっては、もはや作戦もなければ勝ち目もない。おまけに蹴りまで使えるとあっては・・お手上げです。

 ・・・あとはできるだけ痛くない技をもらって参ったするか。。

 が、とりあえず先ほど右足にもらったローキックは痛かったけれども効いているという感じではないので、今度は左足リードのオーソドックスに構え直します。

 
 タカはフットワークを軽快に使い少し間合いを置いて様子をうかがっています。

 先ほどの私の変化を気にして飛び込めなくなっているようです。

 しかし次の瞬間、左足を半歩踏み込みスピードのある右中段の回し蹴りを飛ばしてきました。


 これを私は膝をあげて肘を落とし辛くもブロックします。タカの顔がかすかに苦痛でゆがむのが見えました。(蹴りというのは蹴るほうも痛いものです)

 
 このときふいに、ふたつめの作戦が浮かびました。もう一度ヤマをはって・・これがはずれたら万事休すです。

 タカは左右にフェイントをかけるようなステップを使い私をかく乱しようとしております。その足がふと止まり・・左足を半歩前に踏み込み・・ふたたび右中段回し蹴り!

 今度はこれをブロックせず最初の作戦同様左リード足を引いてスイッチします。

 タカの右足は私の腹の2cmほど向こうをかすめて空振り・・・そしてタカの背中が見えたそのとき!

「よっしゃああっ!」

 私は思い切って右足を踏み込むと同時にタカの首に右手を巻きつけタカの腰を自分の腰に乗せます。そして軸足を刈る!!

「うわっ!」

 タカの声です。軽量のタカは裏返しにひっくり返ります。

 きれいに投げがきまりました。落下する瞬間頭を打たないよう引き上げつつ、とどめの突きをタカの鼻先にピタリと止めます。

 今度はヤマが当たりました。こういう技はきれいに決まると実にかっこよく見える。

 ほーっ、というため息のようなどよめきがギャラリーの若衆からもれます。

「ん!よーし。それまでだ!」宮城さんです。

「みんな気が済んだな。よし!仕事にもどれ」

 ・・・終わった。。。。(ほっ)

 ・・・・

 その日の仕事が終わってから私とタカは宮城さんに近くの居酒屋に誘われました。

 この時から私とタカは奇妙な縁で結ばれることになります。
 ・・といってもボーイズラブとかの話じゃないからね。
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