タバコ蹴りの妙技が炸裂する
文字数 2,481文字
ホテルに戻った私たちは、フロントでチェックアウトの手続きを済ませてからここに泊まっている連中を探します。
一応、出て行くなら挨拶くらいはしておきたかった。
プールに行ってみると、ビル、ジョンとその彼女・・他にも何人かの白人旅行者たちが泳いだり日光浴をしています。
ジョンはすぐに私たちを見つけて、声をかけてきます。
「先生!今日は泳がないんですか?」
「うん。実はこっちに居る知り合いの家に招待されたので、今日はホテルを出るんだ。それで君たちにも挨拶しとこうと思って。短い間だったけど楽しかったよ」
OH!と言うとジョンは泳いでいるビルに声をかけ呼び戻します。
「ビル、トミー先生がこのホテルを出るんだそうだ」
「え?先生、どこへ行くんですか?」
ビルが聞きます。
「いや、まだチェンマイなんだけど、知り合いの家に招待されたもんだから・・またそこらで見かけるかもしれないけどね。まあとにかく色々ありがとう。ところでエミリーたちは出かけているのかな?」
「さあ、なんかさっきフランスから来た野郎がさかんに声かけてましたけど。モデルみたいにいい男だったから、あの娘たちもヤバいんじゃないかなあ」
・・・なに!・・・私の顔色が少し変わったのに、ビルは気がついたのか。。
「いや、声をかけてたのはレストランですよ。ついさっきのことだから、まだ居るんじゃないのかなあ。。」
「・・・そうか・・・タカ、レストランに行くぞ」
「はあ・・・?押忍。。」
私が早足で歩くあとをタカが追いかけながら
「ちょっと師匠。何を怒ってるんですか。さっき静子さんにオームのことを断ったくせに、今度はエミリーちゃんのことで怒っててどうするのさ!?」
「別に僕は怒ってないぞ。ただエミリーたちにも挨拶をしておきたいだけさ」
レストランに入ると・・・居た。
エミリーとその友達はテーブルを挟んで向かい合わせに座っていますが、エミリーの横には、なんとも色男ぶった白人が座っています。
にやけた顔をして喋りながら、ときおりエミリーの肩や髪に触れています。
くわえタバコでクールにきめているつもりか・・やな野郎です。
エミリーは困った顔をして笑っていますが、まんざらでもない風にも見える。
「あーあ。。師匠、あれはハンサムだわ。師匠じゃちょっと勝ち目ないなあ」
「黙れ。あんなにやけた野郎に師匠が負けると思うわけか?タカは」
「え?・・・いや、ちょっと師匠、まさか暴力で解決する気じゃ・・?」
私はつかつかとそのテーブルに向かいます。
エミリーが私に気がつきます。
「あ・・トミー先生。こんにちは」
フランス野郎は・・なんだこの東洋人は?という顔でこちらを見ますが無視。
「エミリー、実は今日このホテルを出て知り合いの家に泊まることになったんだ。でも当分チェンマイに居るから、よかったら明日の夕食でも一緒できないかなあ?」
結構、私としては勇気を出して言ったのです。
「ええ、でも。。」
と言うと、エミリーはフランス野郎のほうに目をやります。
フランス野郎はくわえたタバコを指でつまんでから、エミリーの耳元に唇をよせてなにか囁きます。
エミリーがくすっと笑うのが聞こえました。
フランス野郎はエミリーの耳から唇を離すと、勝ち誇ったように微笑みながら
再びタバコをくわえて、ゆっくりと私に目を向けます。
・・・野郎・・・
次の瞬間!私はふんぞり返ったフランス野郎の顔面に足を飛ばしました。
パシンと、くわえタバコが吹っ飛んだのを確認して、足を引き戻します。
あわてて身体をそらそうとしたため、後ろにひっくり返りそうになるフランス野郎ですが、なんとかバランスを保ちました。残念。
タカは走っていって飛ばされたタバコを拾います。
「女性に顔を近づけるんなら、タバコの火を消すのが紳士というものだろ?」
フランス野郎は顔を真っ赤にしていますが、黙っています。
かかってくる気はなさそうだ。
ふと、エミリーのほうを見ると、彼女も何か怯えた顔になっています。
「エミリー、すまなかった。今の話は忘れてくれ。じゃあ」
私たちはレストランを出ました。
・・・・
荷物をトゥクトゥクに積み込んで、静子さんの家に向かいます。
「あーあ。。。やっちゃったよタカ。エミリーに嫌われたよなあ」
クルマに揺られながら、私は後悔することしきりです。
「あれはちょっとなあ。。師匠いきなり蹴るんだもん。あれはダメですよ」
「そーだよなあ。。でも本当にあのフランス野郎の顔見てたら、腹立って」
「だから言ったでしょう。そういう心の中の野獣を飼いならさなきゃダメなんですよ。師匠もオレも」
ふと気がつくと、タカはこの旅で明らかに人間が成長しています。
旅の最初の頃はすぐに暴走しそうになるタカに私が手を焼いていたのに、今ではタカが私をなだめている。なんとも成長していないのは私だ。。。
「まあ、師匠。いいじゃないっすか。エミリーは所詮行きずりの恋。師匠にはオームというフィアンセがちゃんといるじゃないですか」
「婚約してねーよ!!」
トゥクトゥクは橋を越えてチェンマイ郊外へ。
「師匠。それはそうとですね、さっきのあのタバコ蹴りですけど。あれ、オレはマジでびっくりしたんですよ。師匠があんなこと出来るなんてさ。しかも向こうだって動くんだから、蹴りをミリ単位でコントロールできなきゃ不可能な技ですよね。神業です!正直オレ、かなり師匠を見直したっす!」
タカがしきりに感心します。
「ああ、あれね。。。昔、僕はほら、デモンストレーション専門でやってたから、あれもデモ用に練習してたんだよね。でも、3回に1回しか成功しないんだ。練習相手になってもらった後輩のアゴを蹴飛ばしちゃったりして、すごくヒンシュクものだったので、レパートリーからははずしてたんだよ」
「え・・・?それじゃあ、さっきのは。。。」
「うん。フランス野郎は運が良かったのさ。3分の2のロシアンルーレットに奴は勝ったんだね。その時点で僕の負けが決定したんだよ」
トゥクトゥクが静子さんの家に到着しました。
一応、出て行くなら挨拶くらいはしておきたかった。
プールに行ってみると、ビル、ジョンとその彼女・・他にも何人かの白人旅行者たちが泳いだり日光浴をしています。
ジョンはすぐに私たちを見つけて、声をかけてきます。
「先生!今日は泳がないんですか?」
「うん。実はこっちに居る知り合いの家に招待されたので、今日はホテルを出るんだ。それで君たちにも挨拶しとこうと思って。短い間だったけど楽しかったよ」
OH!と言うとジョンは泳いでいるビルに声をかけ呼び戻します。
「ビル、トミー先生がこのホテルを出るんだそうだ」
「え?先生、どこへ行くんですか?」
ビルが聞きます。
「いや、まだチェンマイなんだけど、知り合いの家に招待されたもんだから・・またそこらで見かけるかもしれないけどね。まあとにかく色々ありがとう。ところでエミリーたちは出かけているのかな?」
「さあ、なんかさっきフランスから来た野郎がさかんに声かけてましたけど。モデルみたいにいい男だったから、あの娘たちもヤバいんじゃないかなあ」
・・・なに!・・・私の顔色が少し変わったのに、ビルは気がついたのか。。
「いや、声をかけてたのはレストランですよ。ついさっきのことだから、まだ居るんじゃないのかなあ。。」
「・・・そうか・・・タカ、レストランに行くぞ」
「はあ・・・?押忍。。」
私が早足で歩くあとをタカが追いかけながら
「ちょっと師匠。何を怒ってるんですか。さっき静子さんにオームのことを断ったくせに、今度はエミリーちゃんのことで怒っててどうするのさ!?」
「別に僕は怒ってないぞ。ただエミリーたちにも挨拶をしておきたいだけさ」
レストランに入ると・・・居た。
エミリーとその友達はテーブルを挟んで向かい合わせに座っていますが、エミリーの横には、なんとも色男ぶった白人が座っています。
にやけた顔をして喋りながら、ときおりエミリーの肩や髪に触れています。
くわえタバコでクールにきめているつもりか・・やな野郎です。
エミリーは困った顔をして笑っていますが、まんざらでもない風にも見える。
「あーあ。。師匠、あれはハンサムだわ。師匠じゃちょっと勝ち目ないなあ」
「黙れ。あんなにやけた野郎に師匠が負けると思うわけか?タカは」
「え?・・・いや、ちょっと師匠、まさか暴力で解決する気じゃ・・?」
私はつかつかとそのテーブルに向かいます。
エミリーが私に気がつきます。
「あ・・トミー先生。こんにちは」
フランス野郎は・・なんだこの東洋人は?という顔でこちらを見ますが無視。
「エミリー、実は今日このホテルを出て知り合いの家に泊まることになったんだ。でも当分チェンマイに居るから、よかったら明日の夕食でも一緒できないかなあ?」
結構、私としては勇気を出して言ったのです。
「ええ、でも。。」
と言うと、エミリーはフランス野郎のほうに目をやります。
フランス野郎はくわえたタバコを指でつまんでから、エミリーの耳元に唇をよせてなにか囁きます。
エミリーがくすっと笑うのが聞こえました。
フランス野郎はエミリーの耳から唇を離すと、勝ち誇ったように微笑みながら
再びタバコをくわえて、ゆっくりと私に目を向けます。
・・・野郎・・・
次の瞬間!私はふんぞり返ったフランス野郎の顔面に足を飛ばしました。
パシンと、くわえタバコが吹っ飛んだのを確認して、足を引き戻します。
あわてて身体をそらそうとしたため、後ろにひっくり返りそうになるフランス野郎ですが、なんとかバランスを保ちました。残念。
タカは走っていって飛ばされたタバコを拾います。
「女性に顔を近づけるんなら、タバコの火を消すのが紳士というものだろ?」
フランス野郎は顔を真っ赤にしていますが、黙っています。
かかってくる気はなさそうだ。
ふと、エミリーのほうを見ると、彼女も何か怯えた顔になっています。
「エミリー、すまなかった。今の話は忘れてくれ。じゃあ」
私たちはレストランを出ました。
・・・・
荷物をトゥクトゥクに積み込んで、静子さんの家に向かいます。
「あーあ。。。やっちゃったよタカ。エミリーに嫌われたよなあ」
クルマに揺られながら、私は後悔することしきりです。
「あれはちょっとなあ。。師匠いきなり蹴るんだもん。あれはダメですよ」
「そーだよなあ。。でも本当にあのフランス野郎の顔見てたら、腹立って」
「だから言ったでしょう。そういう心の中の野獣を飼いならさなきゃダメなんですよ。師匠もオレも」
ふと気がつくと、タカはこの旅で明らかに人間が成長しています。
旅の最初の頃はすぐに暴走しそうになるタカに私が手を焼いていたのに、今ではタカが私をなだめている。なんとも成長していないのは私だ。。。
「まあ、師匠。いいじゃないっすか。エミリーは所詮行きずりの恋。師匠にはオームというフィアンセがちゃんといるじゃないですか」
「婚約してねーよ!!」
トゥクトゥクは橋を越えてチェンマイ郊外へ。
「師匠。それはそうとですね、さっきのあのタバコ蹴りですけど。あれ、オレはマジでびっくりしたんですよ。師匠があんなこと出来るなんてさ。しかも向こうだって動くんだから、蹴りをミリ単位でコントロールできなきゃ不可能な技ですよね。神業です!正直オレ、かなり師匠を見直したっす!」
タカがしきりに感心します。
「ああ、あれね。。。昔、僕はほら、デモンストレーション専門でやってたから、あれもデモ用に練習してたんだよね。でも、3回に1回しか成功しないんだ。練習相手になってもらった後輩のアゴを蹴飛ばしちゃったりして、すごくヒンシュクものだったので、レパートリーからははずしてたんだよ」
「え・・・?それじゃあ、さっきのは。。。」
「うん。フランス野郎は運が良かったのさ。3分の2のロシアンルーレットに奴は勝ったんだね。その時点で僕の負けが決定したんだよ」
トゥクトゥクが静子さんの家に到着しました。