列車内での出来事1

文字数 1,179文字

 およそバックパッカーがスリランカを旅する場合に利用する交通機関は、路線バスか鉄道ということになります。(飛行機は論外ですよね)

 スリランカのバスは以前何かで読んだところでは、「世界一料金が安いバス」なんだそうです。
 たしかにどこまで乗っても数十円しかかからないような・・・。

 そして路線網はおそろしく充実しておりまして本数も多い。スリランカでは、どんな辺鄙なところでもバスで行けないところはない・・と言っても過言ではないでしょう。

 まさに貧乏旅行者にはうってつけの乗り物なのですが欠点は異常に混むことです。
 私はバスの車内に乗れず、昇降口のステップと窓枠に手足を引っ掛けて、スパイダーマンのように貼り付いた状態で移動したことがあります。(スリランカではインドのように屋根には客を乗せない)

 一方、鉄道は路線が都市部を結んでおりますが路線同士の連絡がほとんどなく本数も少ない。そして料金はバスに比べるとかなり割高です。
 しかし、それらを差し引いても余りある快適さ。

 それにスリランカの鉄道にはちょっとしたお楽しみがあるのです。

「それそれ。タカ、その車両・・2って書いてるだろ?それに乗るんだ」

「押忍!オレ席取っておきます」

 普通の急行列車にはセカンドクラスとサードクラスの車両があります。(ファーストクラスはインターシティーエクスプレスという特急にしかありません)

 ひとり旅のころにはサードクラスのチケットで何食わぬ顔をしてセカンドクラスに乗っていたものですが、今回は弟子たちの手前ちゃんとセカンドクラスのチケットを買いました。

「オース!!師匠!こっちです」
 飲み水を買って車内に乗り込むとタカとプレディーが4人がけのシートを占領して待っています。

「おお。ご苦労!」タカとプレディーはシートに並んで座り、広いほうに私を座らせます。乗客がつぎつぎに乗り込んできますが、タカとプレディーが睨みを利かせるため誰も私の横に座ろうとしません(これじゃ、ならず者だ)

 しばらくすると例のショットガンを持った警官が車内を見回ります。

 彼らが行き過ぎたあと・・車両のジョイント部の扉が開き、コーラ売りがやってきます。

 ・・・来た!・・・これがお楽しみの第一弾。

 両手の指に栓を抜いたコーラを3本づつはさみ、かちゃかちゃリズムをとりながら「スワリスワリスワリイ~ッ!!」と売り言葉を叫びながらやってきます。

 かつて・・・ひとり旅のときには心の中で叫んでいたあのギャグを言葉にする瞬間が今やってきた!!

「もう、座ってるって!」

 ・・・・

 このときがタカが師匠の威厳というものに疑問を持った最初の出来事だったようです。
 このあともいろいろあって、現在では私の威厳というものはすっかり地に堕ちまして、弟子にデブよばわりされています。

 気まずい沈黙のなか列車はキャンディに向かいます。
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