オトシマエはついた
文字数 2,364文字
「どうしたんです!?その顔は」
中田さんは、バツが悪そうに顔をそむけます。
「ま・・まさかプラーの一味に??」
ふ~っ・・と、あきらめたような表情で中田さんがこちらを向いて口を開きます。
「あまり顔を合わせたくなかったんですがね。。まあ、こんなところで立ち話もなんですから、部屋に入ってください。あ、タカさんもどうぞ」
私たちは中田さんの部屋に入りました。
「散らかっていますけど、ベットの上にでも腰掛けてください」
相変わらず中田さんの部屋は、いたるところに荷物が積み上げられていますので、勧められたとおりベットに座ります。
「タカさんも座ってくださいよ」
「押忍」と返事をしますがタカは座らずに立ったままです。
中田さんは私たちに缶コーラをひとつづつ手渡すと、自分もコーラの缶を開けながら、私の隣に座ります。
「ひどい目に会いましたよお・・・」
中田さんが話し始めます。
「あの娘。あいつ最低ですよ。。。あいつのせいでこんな目に会ったんです」
中田さんは憎憎しげに言います。
「あの娘って・・・あの明美ちゃんですか?」
「そうです。あの明美っていう女子大生。本当に今の日本の若い娘はダメです。日本の将来を愁いてしまいますよ」
突然、憂国に目覚めたか?中田さんは。
「バリに着くなり、ビーチに行きたいって言うから連れてったんですよ。まあ初日から仕事仕事・・って張り切らなくてもいいだろうってことで。僕はまああまりビーチには興味ないので、自由にさせてたんです。そしたらほら、すぐに地元のビーチボーイにつかまりましてね。楽しそうにしてるからバカらしくなって、僕はひとりで町に出て商品を下見することにしたんですよ」
・・・ふむふむ。それで?
「ざっと一回りしたんですが、バリってどちらかというと僕のジャンルの商品は少ないんですね。でもあの娘はカワイイ雑貨やりたいってたから、いくつかめぼしいところにアタリをつけて、ファクトリーにも行って話してきたんです」
・・・ほお。ちゃんと仕事しているのはさすがだ。
「で、暗くなってきたので宿に戻ったんだ。フロントに行くとカギが無いっていうから、そのまま部屋に行くとカギかかってる。ノックしたんだけど出ないんだよね。しかたないのでしばらく部屋の前でボケーと待ってたら、30分ほどしてドアが開いて、さっきのビーチボーイが出てくるんだよ!あとからあの娘もくっついてきて、僕と顔があって『ああ、いたの?』って」
「ぷっ!・・あ、失礼。。。それで?」
「ん?トミーさん、今笑いませんでしたか?・・・まあ、いいや。そりゃ彼女が何をやっていたのかは分かりますよ。僕は別にあの娘の恋人じゃないんだから怒るスジでもないですし。とにかく男には帰ってもらって、明日からの仕入れの段取りを話そうと思ったら『今日は疲れたから、もう寝る』って。本当に寝ちゃったんです」
・・・ぷぷぷぷっ!
「翌朝になっても、起きないんですよ。もう放っておいて、ひとりで町に出たんです。また、ドアの前で待ってるの嫌ですから、今度はカギもって。メシ食ってちょっと町をぶらついてから部屋に戻ったんだ。そしたらあいつ、もうベットの中に男引っ張り込んでるんだよ!さすがの僕もブチ切れですよ。真っ最中だったけどシーツ引っぺがして、怒鳴ってやったんだ。『このバカ女!朝っぱらから犬みたいに盛ってないでちょっとは仕事のこと考えろ!』って。そしたら、あの娘、逆切れしてモノを投げつけてくるんです。灰皿とかコップとか」
・・・ぷぷぷぷぷぷぷ♪
「僕も本気で腹が立ったので、この女ぶってやろうと思いまして」
・・・この人は女をグーで殴れる人だったよな。。。
「でも、手を振り上げたときにガンと来まして・・・男のほうが殴りかかってきたんです。それがこれ」
と言って、黒く縁取りされた目を指差します。
「殴り返してやろうと思ったんですが、意外とこいつが強くてボコボコ。ひどいですよ。あの娘は。僕がボコボコにされてるのを見て、ケラケラ笑ってるんですから・・・ん?トミーさん、何?苦しそうな顔をして」
「・・・い・・いや。。ひどいですね・・それは・・・プッ!」
「あー!トミーさん、笑ってない?何笑ってるんですか!!」
「いや・・・笑ってませんよ・・・ん・・ひどいよな・・なあタカ?」
話を急に振られたタカも
「ププププッツ!いや・・失礼しました。押忍!ひどいであります・・プ!」
「・・・タカさんまで!!ああ、ひどいのはあなたたちの方ですよ!なんて冷たい人たちなんだ。いいです。もう帰ってください。さあ早く出て行って!」
「ぷわっははははははは!!」「ぷくくくははあはははは!!」
自分たちの部屋に戻るなり、笑い転げる私たち。
「はははああっ・・・疲れたあ。。しかし師匠、中田さんでも女でひどい目に会うことって、あるんですね」
やっと笑いの収まったタカが言います。
「はああ・・まあな。あの人は普通の人の何倍もの場数をくぐっているから、当然、修羅場の数も相当なものなんだろうね。僕らはいいとこしか見てないけど、ひどい目にもいっぱい会ってるんだろうさ」
ひとしきり笑ったので、ずいぶん気が晴れています。
「そういえば師匠、中田さんにはオトシマエを付けさせるんじゃなかったんでしたっけ?」
「まあ、そうだったけど・・オトシマエは明美ちゃんがかわりに付けてくれたからなあ。。。いい娘だったね♪明美ちゃん」
「ぷぷっ!まあ、そういうことで中田さんは勘弁しますか」
「うん。中田さんにはちょっと悪かったから、明日の朝飯でもおごってあげよう」
今日、エームに人違いされて落ち込んでいたこともすっかり忘れ、ずいぶん寛大な気分になっております。。いやあ、他人の不幸は鴨の味とはよく言ったものだ。
中田さんは、バツが悪そうに顔をそむけます。
「ま・・まさかプラーの一味に??」
ふ~っ・・と、あきらめたような表情で中田さんがこちらを向いて口を開きます。
「あまり顔を合わせたくなかったんですがね。。まあ、こんなところで立ち話もなんですから、部屋に入ってください。あ、タカさんもどうぞ」
私たちは中田さんの部屋に入りました。
「散らかっていますけど、ベットの上にでも腰掛けてください」
相変わらず中田さんの部屋は、いたるところに荷物が積み上げられていますので、勧められたとおりベットに座ります。
「タカさんも座ってくださいよ」
「押忍」と返事をしますがタカは座らずに立ったままです。
中田さんは私たちに缶コーラをひとつづつ手渡すと、自分もコーラの缶を開けながら、私の隣に座ります。
「ひどい目に会いましたよお・・・」
中田さんが話し始めます。
「あの娘。あいつ最低ですよ。。。あいつのせいでこんな目に会ったんです」
中田さんは憎憎しげに言います。
「あの娘って・・・あの明美ちゃんですか?」
「そうです。あの明美っていう女子大生。本当に今の日本の若い娘はダメです。日本の将来を愁いてしまいますよ」
突然、憂国に目覚めたか?中田さんは。
「バリに着くなり、ビーチに行きたいって言うから連れてったんですよ。まあ初日から仕事仕事・・って張り切らなくてもいいだろうってことで。僕はまああまりビーチには興味ないので、自由にさせてたんです。そしたらほら、すぐに地元のビーチボーイにつかまりましてね。楽しそうにしてるからバカらしくなって、僕はひとりで町に出て商品を下見することにしたんですよ」
・・・ふむふむ。それで?
「ざっと一回りしたんですが、バリってどちらかというと僕のジャンルの商品は少ないんですね。でもあの娘はカワイイ雑貨やりたいってたから、いくつかめぼしいところにアタリをつけて、ファクトリーにも行って話してきたんです」
・・・ほお。ちゃんと仕事しているのはさすがだ。
「で、暗くなってきたので宿に戻ったんだ。フロントに行くとカギが無いっていうから、そのまま部屋に行くとカギかかってる。ノックしたんだけど出ないんだよね。しかたないのでしばらく部屋の前でボケーと待ってたら、30分ほどしてドアが開いて、さっきのビーチボーイが出てくるんだよ!あとからあの娘もくっついてきて、僕と顔があって『ああ、いたの?』って」
「ぷっ!・・あ、失礼。。。それで?」
「ん?トミーさん、今笑いませんでしたか?・・・まあ、いいや。そりゃ彼女が何をやっていたのかは分かりますよ。僕は別にあの娘の恋人じゃないんだから怒るスジでもないですし。とにかく男には帰ってもらって、明日からの仕入れの段取りを話そうと思ったら『今日は疲れたから、もう寝る』って。本当に寝ちゃったんです」
・・・ぷぷぷぷっ!
「翌朝になっても、起きないんですよ。もう放っておいて、ひとりで町に出たんです。また、ドアの前で待ってるの嫌ですから、今度はカギもって。メシ食ってちょっと町をぶらついてから部屋に戻ったんだ。そしたらあいつ、もうベットの中に男引っ張り込んでるんだよ!さすがの僕もブチ切れですよ。真っ最中だったけどシーツ引っぺがして、怒鳴ってやったんだ。『このバカ女!朝っぱらから犬みたいに盛ってないでちょっとは仕事のこと考えろ!』って。そしたら、あの娘、逆切れしてモノを投げつけてくるんです。灰皿とかコップとか」
・・・ぷぷぷぷぷぷぷ♪
「僕も本気で腹が立ったので、この女ぶってやろうと思いまして」
・・・この人は女をグーで殴れる人だったよな。。。
「でも、手を振り上げたときにガンと来まして・・・男のほうが殴りかかってきたんです。それがこれ」
と言って、黒く縁取りされた目を指差します。
「殴り返してやろうと思ったんですが、意外とこいつが強くてボコボコ。ひどいですよ。あの娘は。僕がボコボコにされてるのを見て、ケラケラ笑ってるんですから・・・ん?トミーさん、何?苦しそうな顔をして」
「・・・い・・いや。。ひどいですね・・それは・・・プッ!」
「あー!トミーさん、笑ってない?何笑ってるんですか!!」
「いや・・・笑ってませんよ・・・ん・・ひどいよな・・なあタカ?」
話を急に振られたタカも
「ププププッツ!いや・・失礼しました。押忍!ひどいであります・・プ!」
「・・・タカさんまで!!ああ、ひどいのはあなたたちの方ですよ!なんて冷たい人たちなんだ。いいです。もう帰ってください。さあ早く出て行って!」
「ぷわっははははははは!!」「ぷくくくははあはははは!!」
自分たちの部屋に戻るなり、笑い転げる私たち。
「はははああっ・・・疲れたあ。。しかし師匠、中田さんでも女でひどい目に会うことって、あるんですね」
やっと笑いの収まったタカが言います。
「はああ・・まあな。あの人は普通の人の何倍もの場数をくぐっているから、当然、修羅場の数も相当なものなんだろうね。僕らはいいとこしか見てないけど、ひどい目にもいっぱい会ってるんだろうさ」
ひとしきり笑ったので、ずいぶん気が晴れています。
「そういえば師匠、中田さんにはオトシマエを付けさせるんじゃなかったんでしたっけ?」
「まあ、そうだったけど・・オトシマエは明美ちゃんがかわりに付けてくれたからなあ。。。いい娘だったね♪明美ちゃん」
「ぷぷっ!まあ、そういうことで中田さんは勘弁しますか」
「うん。中田さんにはちょっと悪かったから、明日の朝飯でもおごってあげよう」
今日、エームに人違いされて落ち込んでいたこともすっかり忘れ、ずいぶん寛大な気分になっております。。いやあ、他人の不幸は鴨の味とはよく言ったものだ。