列車内での出来事2

文字数 1,146文字

 スリランカの列車のお楽しみのもうひとつはつぎつぎにやって来る「物乞い」です。

 子供を抱いた痩せた女・・といオーソドックススタイルから始まって、子供が走り回って仏様のありがたい教えを書いた紙を配って行き、あとで集金するパターン。
 10歳くらいの女の子がタンブリンをたたきながら歌を歌って回るパターン。

 まるでレビューを見ているように楽しいのです。
 私はこの物乞い鑑賞用に1ルピーコインをタバコの箱に詰めて持っていました。

「こんどは何がくるかねえ?」

「押忍。こいつら停車駅ごとに乗り込んでくるんですね。面白いなあ」

 そこへパイナップル売りが・・

「スワリ~アンナッシ~!(パイナップルいらんかえ)」

「おっとプレディー!そいつからパイナップル買ってくれ。3っつな」

「OK、センパイ」

「うわっ!師匠!こいつパイナップルに唐辛子かけやがった」

「ん?まあこれがスリランカ流だな。。」

「間違ってますよ!これは絶対!」

 こんな調子で列車の旅は続きます。

「あふ~っ!たは~っ!」顔を真っ赤にしてタカがなにをしているかと言うと、指先で物乞い用の1ルピーニッケルコインを曲げようとしているのです。

 先ほど私が「空手王マス・大山はコインを指で曲げる事が出来たんだ」と話したのでいきなり挑戦しているのです。

「わはは。いくらタカが力があってもそれは無理だよ。達人レベルの技だもん」

「うはー!!ダメだこりゃ。難しいですねえ・・あんまり曲がらないっす」

「・・・え?・・あんまりって。。。」

 タカが返してよこしたコインを見て私は唖然としました。

 かすかにですがコインはへの字形に曲がっていたのです。

 ・・・バケモノか、こいつは。。

 そんなバケモノタカもお腹は常人だったようで(笑)先ほどからトイレに行く頻度があがっています。

「う、師匠。ダメだ。また腹が痛いっす。なにか病気でしょうか?これは」

「心配ないよ。スリランカの通過儀礼みたいなもんだから。とにかくトイレに行って出すもの出しちゃえば。でもまあとうぶん絶食が必要だな」

「押忍・・・じゃちょっと失礼して行ってきます」

 タカが席を立ってトイレに向います。

 その間に私とプレディーはコイン曲げに挑戦。

「くは~!ダメだ。全然曲がらん」

「ボクもダメです。。。タカセンパイには勝てないわけだ。。これじゃ」

 そのとき!騒ぎはおこりました。

 ドカン!ガチャン!「*****!!(シンハラ語の怒鳴り声)」

 私とプレディーが物音のする方を見ると・・・

 案の定、タカがスリランカ人の若い男2人ともみ合ってます。
 タカの足元には男がひとり苦しそうな顔をしてうずくまっている。。
 どうやらひとりはタカがやっちゃったみたいです。

 ・・・やれやれ。。どうしてスリランカくんだりまできてこうなるかなあ。。
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