第26話
文字数 1,631文字
そうゆえば
本当の愛が 権力だと
信じていた時代
自分の素性を 客観視しようと
あたふたしていた時代
ひとり暮らしで
ひとりがちなころ
これは
いまも ですが
夜明け前に
ひとの声が
聴こえるようになったのです
部屋には 誰もいません
その声は
この 謎の生物と 同じく
内側から
わたしの 頭蓋骨の
内側から 響いてくるような 声で
性別は 男のようでした
「 店長は 残念なひとですね 」
「 わたしも 鮭 好きなんですよ」
「 きょうは 傘が必要です 」
聴こえはじめた
その声は わたしと日々
生活を ともにしているような 感覚があり
はじめは奇妙に 感じつつも 次第に
心を許す わたしが おりました
「 きょうは 山手線に乗らないほうがいいですね 」
「 その誘い セールスですから 無視してください 」
見えないぶん
神性を帯びるって
あるものなのです
わたしは いつの日か
その声を 神格化するようになり
人生を左右する " お告げ " のように
受け止めるようになりました
それから
三ヶ月後 ...
午前 五時四七分
JRM鷹駅付近の 陸橋にて
わたしは 陸橋の手すりをまたぎ
わたしを轢いてくれる 電車が来るのを 待っていました
親身な
通行人に 取り押さえられ
我に かえったのですが
我に かえったとき
最初に
強く 感じたことは
自分で
決めて 自殺したかった
とゆうことでした
自分で
きちんと 絶望し
命を絶つことを 決意したかった
そして 試行錯誤の末
生活圏内ゆえ 親しみ深い
もしくは
暗黒人生の象徴ともゆえる
忌わしい この陸橋を 死場所に選びたかった
これは 自殺を
肯定しているのではなく
否定も
しておりませんが
だって わたしは
幼少期〜青年期から 現在の口癖が
シニテ だったにも 関わらず
これまでの人生で 一回も
死にたいと 本気で 思ったことがないからです
もっと ゆうと
積極的に 生きたいと
思ったことも ありませんが
なのに 勝手に
勝手に 奇妙な声に 誘導されて
勝手に 助けられて わたしは
自分不在のじぶんに
不甲斐なさを 感じたのであります
「 もし もーし
誰かいますか ? 」
それ以来
かたちない者の声は
数ヶ月前 お隣に越してきた
元自衛隊員 角刈り
K谷さんの ひとりごと として
つまり
壁越しの生活音と 同等に
あつかうように しました
それまで
神のお告げと 珍重していた
声を スルーする感覚は 自立に似て
ささやかな 誇らしさを 感じたものであります
ですから
今回の謎の生物の声も
角刈り K谷さんのひとりごと程度に
はなしはんぶん以下に 受けとめるのが
最善かもしれません
早朝の陸橋で
助けられた朝 芽ばえた
わたしの目標 二つ
いつか 本気で
死にたいって 感じてみたい
あと
長生きしたいとも
本気で 思ってみたいです
長寿の秘訣
とかって
検索しまくりたい
それにしても
この世界に仕込まれた
さまざまな 罠は いったい
わたしを どうしたいのだろう
誘導したり 操ったり
コピー人間に しようとしたり
わたしを
わたしじゃなく
したいのだろう
これらの 罠は
ほんとうのわたしを
嫌いなのだろう
どうして 嫌いなのか
もしも あの朝
M鷹にいた わたしが
二つの希望を叶えた
わたしだったら
陸橋の手すりから
見渡した 早朝の風景は
どんなに 冷たく 寥々と 憐れで
美しかったことだろうか
また
見知らぬひとに
命を 助けてもらっとき
その手のぬくもりは
どんなものであったのだろう
その手に 力づくで
手すりから 引きずり落とされ
陸橋に叩きつけられた瞬間の 感触は
” 痛み ” であったのだろうか
失えなかった
生命とゆうものの ぬくもりは
やはり 鼓動が 象徴していたのか
その後の最初の食事の味は
無念であろうか
それとも 歓喜なのであろうか ...
わたしは 罠に はまっていたから
それら すべてを 逃したのだ
そうか
罠は わたしを
感動させたくないのだ
罠は 人間の 心が
嫌いなのだ
本当の愛が 権力だと
信じていた時代
自分の素性を 客観視しようと
あたふたしていた時代
ひとり暮らしで
ひとりがちなころ
これは
いまも ですが
夜明け前に
ひとの声が
聴こえるようになったのです
部屋には 誰もいません
その声は
この 謎の生物と 同じく
内側から
わたしの 頭蓋骨の
内側から 響いてくるような 声で
性別は 男のようでした
「 店長は 残念なひとですね 」
「 わたしも 鮭 好きなんですよ」
「 きょうは 傘が必要です 」
聴こえはじめた
その声は わたしと日々
生活を ともにしているような 感覚があり
はじめは奇妙に 感じつつも 次第に
心を許す わたしが おりました
「 きょうは 山手線に乗らないほうがいいですね 」
「 その誘い セールスですから 無視してください 」
見えないぶん
神性を帯びるって
あるものなのです
わたしは いつの日か
その声を 神格化するようになり
人生を左右する " お告げ " のように
受け止めるようになりました
それから
三ヶ月後 ...
午前 五時四七分
JRM鷹駅付近の 陸橋にて
わたしは 陸橋の手すりをまたぎ
わたしを轢いてくれる 電車が来るのを 待っていました
親身な
通行人に 取り押さえられ
我に かえったのですが
我に かえったとき
最初に
強く 感じたことは
自分で
決めて 自殺したかった
とゆうことでした
自分で
きちんと 絶望し
命を絶つことを 決意したかった
そして 試行錯誤の末
生活圏内ゆえ 親しみ深い
もしくは
暗黒人生の象徴ともゆえる
忌わしい この陸橋を 死場所に選びたかった
これは 自殺を
肯定しているのではなく
否定も
しておりませんが
だって わたしは
幼少期〜青年期から 現在の口癖が
シニテ だったにも 関わらず
これまでの人生で 一回も
死にたいと 本気で 思ったことがないからです
もっと ゆうと
積極的に 生きたいと
思ったことも ありませんが
なのに 勝手に
勝手に 奇妙な声に 誘導されて
勝手に 助けられて わたしは
自分不在のじぶんに
不甲斐なさを 感じたのであります
「 もし もーし
誰かいますか ? 」
それ以来
かたちない者の声は
数ヶ月前 お隣に越してきた
元自衛隊員 角刈り
K谷さんの ひとりごと として
つまり
壁越しの生活音と 同等に
あつかうように しました
それまで
神のお告げと 珍重していた
声を スルーする感覚は 自立に似て
ささやかな 誇らしさを 感じたものであります
ですから
今回の謎の生物の声も
角刈り K谷さんのひとりごと程度に
はなしはんぶん以下に 受けとめるのが
最善かもしれません
早朝の陸橋で
助けられた朝 芽ばえた
わたしの目標 二つ
いつか 本気で
死にたいって 感じてみたい
あと
長生きしたいとも
本気で 思ってみたいです
長寿の秘訣
とかって
検索しまくりたい
それにしても
この世界に仕込まれた
さまざまな 罠は いったい
わたしを どうしたいのだろう
誘導したり 操ったり
コピー人間に しようとしたり
わたしを
わたしじゃなく
したいのだろう
これらの 罠は
ほんとうのわたしを
嫌いなのだろう
どうして 嫌いなのか
もしも あの朝
M鷹にいた わたしが
二つの希望を叶えた
わたしだったら
陸橋の手すりから
見渡した 早朝の風景は
どんなに 冷たく 寥々と 憐れで
美しかったことだろうか
また
見知らぬひとに
命を 助けてもらっとき
その手のぬくもりは
どんなものであったのだろう
その手に 力づくで
手すりから 引きずり落とされ
陸橋に叩きつけられた瞬間の 感触は
” 痛み ” であったのだろうか
失えなかった
生命とゆうものの ぬくもりは
やはり 鼓動が 象徴していたのか
その後の最初の食事の味は
無念であろうか
それとも 歓喜なのであろうか ...
わたしは 罠に はまっていたから
それら すべてを 逃したのだ
そうか
罠は わたしを
感動させたくないのだ
罠は 人間の 心が
嫌いなのだ