第11話
文字数 1,278文字
さようならの予感だ
さようならの予感です
なにと さようなら
するのかは 全然 わからないのですが
さようならの予感がしました
三日 ...
過ぎても
先日の 残像が
たかいところの 残像が
なんだか
透明な植物と化してしまって
わたしの足首を うでを つかんで
はなさないのだ
だけど
きょうは バイトでした
駅前 TSUTAYA
火曜日のおにいさん
わたしへの態度が
いつもと同じで よかった
それと 今朝
お庭のところにいた 大家さんの
長女さんも バイトさきの電話番さんも
わたしへの せっしかたが ふつうで
みんな ふつうで よかったです
どのような質のものでも
わたし 変化が 苦手です
だから このふつうさが
なにもないみたいな ふつうさが
唯一の 希望ですのん
S淵さんは
帰りぎわ いつも ふつうに
このことは
ふたりの秘密だよって
わたしのおでこを 指で さわります
ふつうな感じで
そのたびに わたしは
こくんと うなづきながら
秘密とは
秘密とは
小三のときに 一瞬
わたしの父となった
千葉県の男のひとが仕掛ける
鹿用の罠に なんて 似ているのでしょう
と 感心するのです
その罠は
もがけば もがくほど
声をあげれば あげるほど
とがったはがねが 鹿の足にくいこむ
仕組みになっていたからです
だから その罠にかかる
小動物は いつも ふつうの顔で
そこに よこたわっていました
この 罠の作り手
つまり 一瞬の父は かつて
東京で漫画家を目指していたそうな
手づくりの罠が できるたびに
母とつれごのわたしに 罠の仕組みとかを
漫画仕立てにして 説明してくれました
きゃっきゃと
笑顔で 反応する 母親
とちがって
わたしは えものである
鹿に 感情移入して 道ばたでよく
吐いていました
わたしが どうして
主役のおじさんでなく 鹿に
感情移入したかとゆうと
鹿には はなが あったからです
当時 わたしは
こどもでしたので
はなには 正直でした
罠づくりを
正統化するためだろう
その漫画は いつも
鹿が 悪者として 描かれ
なぜか 鹿は より 激しい 劇画タッチでした
しかし
わたしは つい
鹿ばかりを 目で追ってしまい
もはや
おじさんは 見えませんでした
正義とか 悪とか
みための可愛らしさとか
性格のよさとか
いっさい 関係のない
魅力
はな
とゆうものを
わたしは そのとき
この 人生で
はじめて 認知したのだと 思います
その後
一瞬の父は
一瞬にして わたしたち
母子の人生からいなくなり
話題にあがることも 思い出すことも
なくなりました
だけど
その 鹿は
その 鹿だけは
その後も いつも
わたしと一緒に いてくれて
「 ボゴォォ 」
「 ゾクッ ヂュルルル ... 」
「 ブキッ バシッ ドカッ ズンッ 」
って
「 むぎゅう ぐぐぐぐ ... 」
「 ギュル ギュル ギュル 」
って
全然
ふつうな感じ
ではなく
みんな ふつうなのに
全然 ふつうな感じじゃなく
いつも
わたしのそばに
いてくれたのでした
さようならの
予感がする
さようならの
予感です
これからは
これらを わたしが
じぶんで
やらないといけないのかな
さようならの予感です
なにと さようなら
するのかは 全然 わからないのですが
さようならの予感がしました
三日 ...
過ぎても
先日の 残像が
たかいところの 残像が
なんだか
透明な植物と化してしまって
わたしの足首を うでを つかんで
はなさないのだ
だけど
きょうは バイトでした
駅前 TSUTAYA
火曜日のおにいさん
わたしへの態度が
いつもと同じで よかった
それと 今朝
お庭のところにいた 大家さんの
長女さんも バイトさきの電話番さんも
わたしへの せっしかたが ふつうで
みんな ふつうで よかったです
どのような質のものでも
わたし 変化が 苦手です
だから このふつうさが
なにもないみたいな ふつうさが
唯一の 希望ですのん
S淵さんは
帰りぎわ いつも ふつうに
このことは
ふたりの秘密だよって
わたしのおでこを 指で さわります
ふつうな感じで
そのたびに わたしは
こくんと うなづきながら
秘密とは
秘密とは
小三のときに 一瞬
わたしの父となった
千葉県の男のひとが仕掛ける
鹿用の罠に なんて 似ているのでしょう
と 感心するのです
その罠は
もがけば もがくほど
声をあげれば あげるほど
とがったはがねが 鹿の足にくいこむ
仕組みになっていたからです
だから その罠にかかる
小動物は いつも ふつうの顔で
そこに よこたわっていました
この 罠の作り手
つまり 一瞬の父は かつて
東京で漫画家を目指していたそうな
手づくりの罠が できるたびに
母とつれごのわたしに 罠の仕組みとかを
漫画仕立てにして 説明してくれました
きゃっきゃと
笑顔で 反応する 母親
とちがって
わたしは えものである
鹿に 感情移入して 道ばたでよく
吐いていました
わたしが どうして
主役のおじさんでなく 鹿に
感情移入したかとゆうと
鹿には はなが あったからです
当時 わたしは
こどもでしたので
はなには 正直でした
罠づくりを
正統化するためだろう
その漫画は いつも
鹿が 悪者として 描かれ
なぜか 鹿は より 激しい 劇画タッチでした
しかし
わたしは つい
鹿ばかりを 目で追ってしまい
もはや
おじさんは 見えませんでした
正義とか 悪とか
みための可愛らしさとか
性格のよさとか
いっさい 関係のない
魅力
はな
とゆうものを
わたしは そのとき
この 人生で
はじめて 認知したのだと 思います
その後
一瞬の父は
一瞬にして わたしたち
母子の人生からいなくなり
話題にあがることも 思い出すことも
なくなりました
だけど
その 鹿は
その 鹿だけは
その後も いつも
わたしと一緒に いてくれて
「 ボゴォォ 」
「 ゾクッ ヂュルルル ... 」
「 ブキッ バシッ ドカッ ズンッ 」
って
「 むぎゅう ぐぐぐぐ ... 」
「 ギュル ギュル ギュル 」
って
全然
ふつうな感じ
ではなく
みんな ふつうなのに
全然 ふつうな感じじゃなく
いつも
わたしのそばに
いてくれたのでした
さようならの
予感がする
さようならの
予感です
これからは
これらを わたしが
じぶんで
やらないといけないのかな