第2話

文字数 578文字

S淵さんは かわいそうなひとです
S淵さんとは 水曜日によく電話がかかってくる男のひとです
夕べは水曜日でしたので
そのまえのまえくらいの水曜日にも つれてゆかされた
たかいビルの たかい場所に またつれてゆかされました

かわいそうは 愛ではないと
女のせんぱいに 叱られたことがあります

ただ 夏目漱石は
かわいそうは 愛だとか なんとか
そんなことを 書いてくれていた 気がしますのです

S淵さんは おそらく
まだやわらかいころの こども時代の脳みそを
誰かにさわられたに ちがいありません

その たいそうな くだらなさ はずかしさ 息くるしさを
わたしは つい わかってしまいますから S淵さんは
かわいそうな人間なのです

あかるくて やさしく さわやかな人間より
わたしは うす暗く たよりなさをもっている人間と
いっしょに 過ごしたいのでございます

なぜならば そうゆうひとといっしょに 過ごしたほうが
ふつうに 淋しくなりませんからです

おなじ気持ちがわかる人間こそが 大切な人間なんです
あかるくて やさしく ぜんりょうな人間より
おなじ気持ちがわかる人間と いっしょにいたい

わたしは かわいそうな人間と いっしょにいたい
かわいそうな人間と いっしょにいたいのです

わたしは あたまのなかの担任教師に
帰りみち よくこうやって
たくさんの作文を はっぴょうしていました


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