第1話

文字数 778文字

男のひとは みんな
たかいところに わたしを つれてゆきます

小一のときの 男子も ( おやまの公園 )
はじめて車をもった いとこのお兄ちゃんもそうでした( 丘 )
お母さんと会いにいった 父になる計画のひとも そうでしたし( 会社の屋上 )
おともだちの お父さんもそうでした( 高尾山 )
バイトのせんぱいもそう( 観覧車 )
みんな みんな そうなのです

そのてん
女のひとはちがいました

女のひとは なんとゆうか
じぶんが うれしいところ
おしゃれだと 思いましたし
とりわけ 地上であることが おおいです

京都っぽい ごはん屋さんだとか
べつの国みたいな 雑貨屋さんだとか
おおきな木樽にはいった 葡萄酒
ふしぎな指輪 ふしぎなお菓子
よく知ってるひとみたいに ごしんせつに 話す
店員さんだとか 植物や そよ風
お庭のある 美術館とかに つれていってくれるのです

わたしは せんじつも
男のひとに たかいところにつれてゆかされました

たかいところは 空気が うすいです
たかいところは 音が 無音です

ですから わたしは
たかいところで わたしは
あぁ わたしは にんげんであった と
ぼんやり 気づかされます

たかいところは やはり
無力ですし いつもの暮らしから 遠いばかりが
なぜか どこか キラキラしていて
夢のなかに 似ています

現実みが
ないぶん かえって
印象づいてしまって
それこそが ほんものの
わたしの現実となってしまう感じです

そして ふっと
わたしが 製品のように
透明な セロファンのなかで
ふっと 目が開かれるとき わたしは
もう すでに 地上にもどされていました
 
街はもう 冬じたく
女のひとは みな 背筋をのばし
ブーツを かつかつ
かつかつと 鳴らしながら

なにかを じっと みつめたり
みはなしたりしています

とても よいにおいがして
まるで 女神さまのようなのです

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