(3)

文字数 907文字

「文枝様に棟梁になって頂かねばならぬのだ。文彦様が棟梁では、我らは滅ぼされてしまう。だからと言って文彦様を殺すことなど、我らには出来るわけがない。だから、お前を始末するのだ。文彦様が跡継ぎになろうなどと、もう考えない様に」
 こいつら、文枝ン家の集団で、文枝派の奴らか? しかし、あいつは「反社会的勢力じゃない」って言っていたけど、こいつら、どう見ても真っ当には思えんぞ。

「おい、こいつを椅子に座らせて、縛り上げておけ!」
 私はさすがに身の危険を感じたので、こいつらを蹴散らして逃げ出そうと考えた。しかし、小柄の癖に、こいつら全員力が強い。私はいとも簡単に2人に両腕を取られ、パイプ椅子に座らされた上で、縄の様なもので後手に縛られてしまった。
 それにしても、こいつら一体何者なんだ? こういう場面では、多かれ少なかれ自分を鼓舞する為に、「大人しくしろ!」とか、「怪我してぇのか!」とか、ドラ声を発するものなんだが、無言で私の抵抗を封じ、淡々と縛り上げやがった。それに、考えてみれば、こいつら無駄に私を殴ったりなどの暴力を振るっていない。私を扱うのに、まるで子供を相手にしているみたいじゃないか?

 正直、私は怖くて震えている。でも、ここは上手いこと言って逃げ出すしかない。私は余裕がある様に、呼吸を整えてから、こいつらを脅しに掛かった。
「お前たち、分かってんだろうな! 私に手を出したら、修一……、いや、耀子さんが黙っちゃいないぞ!」
 修一ならともかく、耀子さんが私の為に何かしてくれる保証はないんだけど、確か、文枝が、こいつらの集団では、耀子さんは「女帝だ」とか言っていた気がする。ここは一発ハッタリをかますしかないだろう。
「ああ、分かっとるわい。我らとて覚悟は出来ておる。こんなことをして生きておられる筈もない。(みな)の為、命など幾らでも捨ててやるわ!」
 や、やべえ! こいつら、狂信者だ!
 この手の奴らは、信念で動いているから決して躊躇がねぇ。私のことも本気で殺しかねないぞ!
「勿論、我らとて無駄に死にたくはない。お前さんもだろう? だったら、黙って消えてはくれぬかのう? 文彦様の前から永遠に……」
「なんだって?」
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