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文字数 988文字

 文彦君と映画を見に行った何日か後、私が家に帰った後に、文枝から呼び出しのメールが入ってきた。
 学校にいる時間に、「帰りに会おう」と言う文枝のメールは珍しくないのだが、夕食近くなってからメールをしてくるなんて、文枝にしては珍しいことだ。私は「少しだけなら」って言って返事を返した。

 そういう訳で、私はいつものもんじゃ屋に着くなり文枝に文句を言ったのだ。
「なんだよ~、こんな時間に」
 それに対して、文枝はニコリともせずに本題に入ってきた。
「お前、この間、何をした?」
 私には文枝が何を言っているのか、訳が分からない。
「なんのことだよ~」
「この前の映画の時だ。お前、文彦に何をした!」
「はぁ?」
「文彦に何をしたと聞いているんだ!」
「何だよ? 映画見て、昼飯食って、その時に、ちゃんと跡継ぎの話しもしたぞ。お前だって言っただろう? 話すだけでいいって。それで文彦君がまだ嫌だって言ったとしても、引き受けるかどうかは文彦君次第とも言ったよな。文彦君が引き受けなかったからって、一々文句言うなよな」
「文彦は……、跡継ぎの話し、受けてもいいって言ってる……」
 文枝は酷く不満そうにそれを口にした。
「だったら、それでいいだろう? 何が不満なんだよ!」
 本当は文枝が後を継ぎたかったのか? だったら、正々堂々と競えばいいだろう? それで姉弟喧嘩になるようだったら、それだけのことじゃないか!
「文彦は条件を付けてきた……」
「何だよ~、煮え切らない奴だな~。その条件が飲めるんだったら飲めばいいし、駄目だったら拒否すればいいだろう? 条件付きでも受けるって言ってるんだから、一歩前進したってことじゃないか!」
 文枝はそれを聞いても、全く嬉しそうな顔をしない。こいつ、本当に文彦君が跡継ぎになるのが不満なのか?
「私は帰るぞ! 馬鹿々々しい。お前がそんな奴だとは思わなかった。もう連絡してくるな!」
 文枝と絶交なんて、絶対出来ないと思うけど、正直、今はこいつの顔なんか見たくも無い。
 私は何も注文せず、そのまま席を立った。
 来る前は、今日は文枝が誘ったんだから、あいつにミックスもんじゃでも奢って貰おうと思っていたんだけど、もう食欲も失せた。帰って家の夕飯を焼け食いしようと思う!
 店を出ようとしたのだけど、文枝の一言で私は動く事が出来なくなった。
「条件ってのは……、お前を嫁に出来たらだそうだ……」
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