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文字数 1,310文字
私は自分でも似合わないとは分かっているが、コーヒー回数券を無駄にする訳にも行かないので、時々、文枝を誘って例のお洒落な喫茶店にしけ込んでいる。
しかし、回数券があるって言っても、コーヒーだけって訳にゃ行かないので、ケーキやら何やら余分な物を頼んでしまう。これだけでも私にとっちゃ結構な出費だ。
とにかくだ、小腹を塞ぐのなら、私はもんじゃの方が性に合っている!
この日もそんな感じで、例の喫茶店にしけ込んでいたんだ……。
丁度、文枝と私が馬鹿な話をしていた時だ。私のカバンからスマホの着信音が聞こえてきた。
「なんだ? また修一か?」
文枝があきれた様にそう言う。私はここで文枝に揶揄われるのも嫌だったので、「あとで」とだけ返事をしてスマホをしまった。
最近、修一は「逢う訳じゃないだろ!」とか屁理屈つけて、私によくショートメールを送ってくる。大概は耀子さんへの悪口か愚痴だ。
と言う私もそれに応えてるんだから、あいつと五十歩百歩だがな。
それにしても、文枝は何時から藤沢君から、修一って呼び捨てにする様になったんだ? 私の彼氏だから、文枝の頭の中でランクがガクッと下がったんだろうか?
そう言えば、修一と文枝ってどういう繋がりなんだ?
クラスメートであることはそうなんだろうけど、修一は基本、人に声かける様な奴じゃない。ましてや、女子生徒に声かけるなんて、太陽が西から登ったとしてもありそうもない。それを「私を紹介してくれ」なんて、どう考えてもあり得ない。
「文枝、前から訊きたかったんだけど……、どうして修一は、お前に私を紹介する様に頼んだんだ? あいつがそんなこと、人に頼めるとは、私にはとても思えないんだがな……」
「あ、あれは嘘だ。悪いな……。適当に話を創った」
何? こいつ、私を担いでやがったのか?
「そう怒るなよ。お前たちの顔や電車での雰囲気見りゃ、お前らお互いに意識してたの見え見えだぜ。お似合いのカップルだよ」
お似合いかどうかは知らないが、私は別に修一に不満はない。だが、修一はどうだろう? あいつは黙っていれば、ぱっと見には随分なイケメンだ。ちゃらい女の一人や二人、とっかえひっかえして付き合うことも出来た筈だ。
もし私の様な男勝りの女が良いのなら、文枝の方がよっぽど美人だし気風もいい。そうだ! どうして修一は文枝と付き合おうとしなかったんだろう? もしかすると、修一は別の事で文枝に話しかけたんじゃないだろうか? 何でもいいから文枝と話がしたいばっかりに……。
「文枝……、修一は、お前のことが好きだったんじゃないのか?」
私が心の奥底から振り絞る様に尋ねたのに……、文枝の馬鹿は、腹を抱えて大笑いしだしやがった! それもソファを転げまわりそうな勢いで、座ったまま両膝をばたばた上下させながら……。おい、パンツが見えるぞ!
私が睨みつけていると、文枝はまだ腹筋が痛いとばかりに、息を切らせて何とか笑いを堪えようとしている。もう、それだけでも失礼だぞ。
「いや、すまん、すまん。晶がまた馬鹿なこと言うから、もう耐えられなかった」
「おい!」
「実は修一は、あたしの兄なんだ。あたしと奴は、腹違いの兄妹なんだ」
しかし、回数券があるって言っても、コーヒーだけって訳にゃ行かないので、ケーキやら何やら余分な物を頼んでしまう。これだけでも私にとっちゃ結構な出費だ。
とにかくだ、小腹を塞ぐのなら、私はもんじゃの方が性に合っている!
この日もそんな感じで、例の喫茶店にしけ込んでいたんだ……。
丁度、文枝と私が馬鹿な話をしていた時だ。私のカバンからスマホの着信音が聞こえてきた。
「なんだ? また修一か?」
文枝があきれた様にそう言う。私はここで文枝に揶揄われるのも嫌だったので、「あとで」とだけ返事をしてスマホをしまった。
最近、修一は「逢う訳じゃないだろ!」とか屁理屈つけて、私によくショートメールを送ってくる。大概は耀子さんへの悪口か愚痴だ。
と言う私もそれに応えてるんだから、あいつと五十歩百歩だがな。
それにしても、文枝は何時から藤沢君から、修一って呼び捨てにする様になったんだ? 私の彼氏だから、文枝の頭の中でランクがガクッと下がったんだろうか?
そう言えば、修一と文枝ってどういう繋がりなんだ?
クラスメートであることはそうなんだろうけど、修一は基本、人に声かける様な奴じゃない。ましてや、女子生徒に声かけるなんて、太陽が西から登ったとしてもありそうもない。それを「私を紹介してくれ」なんて、どう考えてもあり得ない。
「文枝、前から訊きたかったんだけど……、どうして修一は、お前に私を紹介する様に頼んだんだ? あいつがそんなこと、人に頼めるとは、私にはとても思えないんだがな……」
「あ、あれは嘘だ。悪いな……。適当に話を創った」
何? こいつ、私を担いでやがったのか?
「そう怒るなよ。お前たちの顔や電車での雰囲気見りゃ、お前らお互いに意識してたの見え見えだぜ。お似合いのカップルだよ」
お似合いかどうかは知らないが、私は別に修一に不満はない。だが、修一はどうだろう? あいつは黙っていれば、ぱっと見には随分なイケメンだ。ちゃらい女の一人や二人、とっかえひっかえして付き合うことも出来た筈だ。
もし私の様な男勝りの女が良いのなら、文枝の方がよっぽど美人だし気風もいい。そうだ! どうして修一は文枝と付き合おうとしなかったんだろう? もしかすると、修一は別の事で文枝に話しかけたんじゃないだろうか? 何でもいいから文枝と話がしたいばっかりに……。
「文枝……、修一は、お前のことが好きだったんじゃないのか?」
私が心の奥底から振り絞る様に尋ねたのに……、文枝の馬鹿は、腹を抱えて大笑いしだしやがった! それもソファを転げまわりそうな勢いで、座ったまま両膝をばたばた上下させながら……。おい、パンツが見えるぞ!
私が睨みつけていると、文枝はまだ腹筋が痛いとばかりに、息を切らせて何とか笑いを堪えようとしている。もう、それだけでも失礼だぞ。
「いや、すまん、すまん。晶がまた馬鹿なこと言うから、もう耐えられなかった」
「おい!」
「実は修一は、あたしの兄なんだ。あたしと奴は、腹違いの兄妹なんだ」