(2)

文字数 798文字

「で、お前はどうなんだ、文枝は?」
「あ、あたしは……」
 文枝にしては珍しく言い澱んでいる。私はその間、はがし(へら)で、もんじゃの端を焦がし、それを口に入れた。
 なにか、味が良く分かんないな……。

「お前、さっき、あたしと絶交するようなこと言ってたよな!」
「あ、ああ。ご免、文枝が本当は親父の跡を継ぎたがってる癖に、文彦君にお為ごかしで、私に説得させていると勘違いしたんだ。悪かった」
「確かにそうじゃ無いが、あたしゃ、別の意味で、お前が軽蔑するような奴かも知れないんだ」
「何だ? それは?」
「あたしは、本当のことを言うと、どうやっても文彦に親父の跡を継いで貰いたい。それが条件なら、文彦がお前と結婚できるように全力で応援したい。あいつは自分では気付いていないが、棟梁として充分にやっていける風格がある。ま、姉の贔屓目かも知れないがな……。そして、お前の旦那としても、不足のある男だとは思っていない。修一にだって負けないと思っている」
 まぁ、確かに今は中学生だから見た目は子供っぽい所もあるけど、文彦君はよく見ると二枚目だし、勉強も相当出来そうだよな。運動は苦手そうだけど、運動選手になるので無ければ、それが短所とは言えないもんな。
 文彦君と比べると、修一も負けない位ハンサムではあるけど、乱暴だし、短絡的だし、生活能力無さそうだし、私の親父との相性は悪いし、いいとこ無いもんなぁ。
「だけどな、お前を修一に紹介したのはあたしなんだ。なのに、あたしが文彦の方を応援する訳にゃいかないだろう? 修一には申し訳ないし、耀子ママにだって顔向け出来やしない……」
「修一はどうなんだ? 耀子さんは?」
 文枝は投げ捨てる様な感じで、こう言い放った。
「修一は……『がんばれ』なんて文彦に言うし、耀子ママは『あらあら』なんて言って面白がっているみたいだし……」
 修一なら確かに言いそうだし、耀子さんは絶対面白がってる!
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み