第96話 急転
文字数 1,077文字
戦いもいよいよ大詰めや。
振りかざしたワイの拳がヤミミンの顔面に迫っていた。
ちょっと待って！
攻撃しないで！
ストォォォォォォップ！
土壇場になって攻撃するなっておかしいやろ
ここは
根性なんて見せたくもないし、どーでもいいわ
やっぱりトドメにガツンとぶん殴っとこか！
そうイキリ立たないでよ！
見逃してくれたら、イイコト教えてあげるから
とっておきのイイコトよ
とっておきて……、
ハァ～、まだ
アンタのえげつないニオイや、尻絡みのネタならもうええで
ひどい言われっぷりなのが腹立つけど、とにかくそれとは全然関係ないっつーの
ハァ？
裏切者やって？
言いがかりちゃうんか！？
まぎれもない事実よ
ワイはひとまず拳を引っ込める。
けれども油断は禁物や。
いつでも応戦できるよう、腰を下ろし前足そろえの姿勢はキープ。
この姿勢は、俗にいう『エジプト座り』ってやつや。
ヤミミンは起き上がると、ワイを上目遣いで見上げ、もったいぶった口調で言いだした。
この話は、あたしもつい最近知ったばかりなの。
組でもトップシークレット扱い
だから、限られた者しか知らない話ってわけ
バカ言わないで。
もちろん逃がしてくれるなら、とっとと家に帰るけどね
まーね♪
うちの幹部のトウとリャクが縄張り拡張のために踏み込んだ地域があるの
まぁ、そんなところね。
いいじゃない、それくらい。モテるメスの特権でしょ
特権て……
それより裏切者について詳しゅう教えてもらおか
極秘情報だから、バラしたのがあたしって知られたらまずいわ。
小声で言うから、耳近づけて
猫は視力は悪くても耳はいいでしょ
どこかに潜んで聞き耳立ててるかもしれないじゃない
ワイの耳、嚙みちぎったりせえへんやろな？
しないわよ
あたしのかわいさに誓って、噛みつきはしないわ
まあええわ。
ほんなら、ちゃんと打ち明けてもらうで
ワイはヤミミンのもとへ恐る恐る耳を寄せた……。
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