第66話 危険な戦い②

文字数 1,342文字




 突如、敵のボスに襲いかかられて、美しきマウティス大ピーンチの状況にゃも。



まさかこんなところでねこねこファイアー組のボスと戦うことになるとはにゃ~


って、ぼやいてる場合じゃにゃいね



ハアアアアッ!




 放たれる拳。迫る脅威。



 ウチは思考を働かせて、瞬時に対抗策を模索する。



紅の振り上げた腕は、左


大抵の場合、最初に出したほうが利き手と相場が決まっている……




 ――紅は、おそらく左利きにゃ。



 利き手側によけてその側面に回り込めば、すぐに反撃が飛んでくる確率は低い。



そうと決まれば、ササッと回避にゃも!




 ウチは掛け声とともに地を蹴った。



 助走ゼロで高々と空中を舞うその姿――



 自分で言うのもなんだけど、華麗にゃも!






ほぅ、かわしたか




 的なき空間を紅の拳がシュッと打つ。



だが、次はどうだ!




 紅はウチを狙って、体の向きを変える。



 即座に反撃してこないってことは、やっぱり利き手は左だったようにゃ。



読みどおりにゃね!


どれだけすばやく動いても、体勢を変えてるあいだに隙ができるにゃも!




 ウチは生じた隙を逃さず、相手の体めがけて拳を突き出した。



偉大なる知恵者アターック!


 


 とりあえず、それっぽい技名を言ってみたにゃ。



 要は高速パンチにゃも。

 


 ウチの鋭すぎる猫パンチが、紅の体を容赦なく打ちまくる。



にゃはは!

パンチ! パンチ! 

連続パーンチ!



フッ、その程度の攻撃でダメージを与えたと思うなよ!



ふにゃんぬ!

何度も叩いたのに効かないにゃんて


バカみたいに打たれ強いにゃね……!




 狙いは正確だったんだけどにゃ~。



 とはいえ突きが浅くて、相手の肩のあたりを軽く打ったにすぎないのも事実にゃ。



こうなったら、走るにゃも!




 ウチはふたたび全速力で駆け出した。



まいったにゃねぇ……。

筋肉ダルマ猫と正面からのぶつかり合うのは、不利でしかないにゃ


どこか攻勢に移れる場所を見つけるのが一番なんだけどにゃ~



敵に背を見せて逃げるか!

臆病者めっ!



ふにゃんぬ。

臆病者ほど勝利するものにゃ


 


 紅が後ろから追走してくる。



 ウチは草地を疾駆しながら、目に映るものを脳みそフル回転で処理していく。



いま必要なのは、戦いに使えそうな場所にゃ




 視力の限界と戦いながら、おぼろげな輪郭におおよその検討をつけていく。



 やや離れた川沿いに、荒れ果てた小屋らしき建物が見える。



使えるにゃ!




 ピコーンときたら、間違いにゃい!



 ウチは猛ダッシュでその建物へ駆け寄る。



どこへ逃げても無駄だっ!



無駄かどうかはこの先のお楽しみにゃよ




 小屋のそばに近づくと、錆びだらけの配管や窓のひさしをつたって建物のてっぺんに飛び乗った。



 こういうとき、猫は楽にゃも。わずか数秒で屋根の上だからにゃ~。



そこはさすが猫!

さすがマウティス! って褒めてくれていいにゃよ?


……いまはそれどころじゃにゃいね




 遠目に見たとおり、屋根の波板はボロボロにゃ。



 かなり傷んでいて、ちょっと力を入れて歩くだけでヒビ割れるほどにゃ。



 すでに屋根の一部が崩落(ほうらく)して大穴があいているところもあれば、波型のプラスチック板を支える骨組みがむき出しになっているところもある。



……にゅふふ。

誘い込む場所としては最適にゃも




 あとはこのマウティスの思惑どおりに、事が運んでくれれば申し分ないんだけどにゃ~……。






















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登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

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