第66話 危険な戦い②
文字数 1,342文字
突如、敵のボスに襲いかかられて、美しきマウティス大ピーンチの状況にゃも。
放たれる拳。迫る脅威。
ウチは思考を働かせて、瞬時に対抗策を模索する。
――紅は、おそらく左利きにゃ。
利き手側によけてその側面に回り込めば、すぐに反撃が飛んでくる確率は低い。
ウチは掛け声とともに地を蹴った。
助走ゼロで高々と空中を舞うその姿――
自分で言うのもなんだけど、華麗にゃも!
的なき空間を紅の拳がシュッと打つ。
紅はウチを狙って、体の向きを変える。
即座に反撃してこないってことは、やっぱり利き手は左だったようにゃ。
ウチは生じた隙を逃さず、相手の体めがけて拳を突き出した。
とりあえず、それっぽい技名を言ってみたにゃ。
要は高速パンチにゃも。
ウチの鋭すぎる猫パンチが、紅の体を容赦なく打ちまくる。
狙いは正確だったんだけどにゃ~。
とはいえ突きが浅くて、相手の肩のあたりを軽く打ったにすぎないのも事実にゃ。
ウチはふたたび全速力で駆け出した。
紅が後ろから追走してくる。
ウチは草地を疾駆しながら、目に映るものを脳みそフル回転で処理していく。
視力の限界と戦いながら、おぼろげな輪郭におおよその検討をつけていく。
やや離れた川沿いに、荒れ果てた小屋らしき建物が見える。
ピコーンときたら、間違いにゃい!
ウチは猛ダッシュでその建物へ駆け寄る。
小屋のそばに近づくと、錆びだらけの配管や窓のひさしをつたって建物のてっぺんに飛び乗った。
こういうとき、猫は楽にゃも。わずか数秒で屋根の上だからにゃ~。
遠目に見たとおり、屋根の波板はボロボロにゃ。
かなり傷んでいて、ちょっと力を入れて歩くだけでヒビ割れるほどにゃ。
すでに屋根の一部が
あとはこのマウティスの思惑どおりに、事が運んでくれれば申し分ないんだけどにゃ~……。
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