第67話 危険な戦い③

文字数 1,372文字




 ジロリ組のエース幹部vs敵のボス猫との戦いは、まだまだ続くにゃも。



 小屋の屋根にいるウチを追って、(くれない)が急接近してきたにゃ。



逃れられると思うなっ!




 重そうな体が瞬時に跳躍する。



 筋肉たっぷりの長身のわりに寸分の狂いもなく屋根に跳び移ると、細い骨組みの上にピタリと収まった。



いきなりひとっ跳びで接近してくるとはにゃあ


すさまじい跳躍力にゃも。

きっと前世はカエルにゃね! 



戯言(ざれごと)を抜かせー!




 ウチの冗談を一蹴し、鋭い牙をいて跳びかかってくる。







イキリ立ってるにゃねぇ




 真正面から向かってくる紅の攻撃は、反撃をいとわない力押しの一手にゃ。



 最もウチが苦手とする攻撃法にゃも。



 応戦しつつ身をひねるが、かわしきれずにシッポの付け根をガブリと噛まれる。



フギャッ!




 痛いにゃねー! つい声が出ちゃったにゃも。



 でも不利を悟られたら負けにゃ。面に出しすぎないようにしないとにゃ。

 


 鼻で息をつき、平静を取り(つくろ)いつつゴロリとその場に倒れ込む。



ゴ、ゴロリンにゃ~!




 にゃんで倒れ込んだかって?



 それには理由があるにゃも。



まずは、できるだけ負荷をかけないよう屋根板に背をつけて……と




 おなかをさらけ出して、しっかり後ろにもたれかかったら――



 反撃タイムにゃー!







必殺の猫キックを喰らえにゃーっ!




 キック、キック、激しいキックの猛打撃にゃよー!



 紅の顔面めがけて、ウチは両足をガシガシ漕ぎまくる。



 この直撃を受けてノーダメージを保てる猫はいないにゃ。ましてウチの爪は、毎日のお手入れを欠かさずよく研磨してるにゃも。



 片足から放たれた一撃が紅の顔を捉えてシュッと打つ。



――ッ!




 ヒットしたにゃ!


 

 顔の一部から毛よりも長く太いものがはじかれて、建物の下へと落下していく。



フンッ! 猪口才(ちょこざい)なっ!




 紅はウチのシッポから離れると、即座に足をピシャリと手で払いのけた。



どうやら当たったのは、ヒゲのみのようにゃね



貴様ほどの知恵者がこの足場の悪い中で捨て身の攻撃を仕掛けるとは意外だったな



ウチだって、全部計算してるわけじゃないからにゃ~



所詮戦いの場においては、その程度が関の山といったところか


おれに隙を見せたが最期!

覚悟するがいい!




 ウチの腹をめがけて攻撃を仕掛けてくる紅。



 キタキタキタ!

 ついにこのときがキタにゃーーーーー!



 弱点丸出し状態のこの体に、紅の拳が振り下ろされる。



覚悟するのはそっちにゃよ!




 言い返して、サッと横向きになった。

 


 ひらいていた体がパタンと閉じて、攻撃から身をかわす。


 

よけたかっ




 標的を失えども、勢いは止まらない。



 紅の拳は、バシッと屋根板を強く打ちつけた。



 すると――





 バキバキバキバキバキッ!





 朽ちた波板に亀裂が生じて、たちまち屋根としての存在価値が失われていく。



なにっ!?


もしや貴様、ワザとこうなるよう誘発したな!



にゃはー!

ようやくウチの策略と気づいたようだけどもう遅いにゃ


おなかを見せたのは、そっちの攻撃を誘うためだったにゃも!




 さすがに朽ちた屋根は壊れるのが早いにゃ。



 それまでどうにか屋根としての形状を保っていたものが、急激なスピードで崩れてバラバラになる。



バカなっ!?




 みずからの足場を失った紅。



 百戦錬磨のボス猫は、崩れたプラスチックの板ごと薄暗い建物の中へ沈んでいった。












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登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

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