第83話 度重なる危機

文字数 1,848文字





前回から話は続いていますが、ちょっとオマケの猫あるあるからどうぞ








それでは続きをお楽しみください







 俺の身に危機が迫っていた。



ボス!




 叫ぶインテリの瞳に、ふっ飛ばされて倒れ込む猫の姿が映っているはずだ。



 だがそれは――俺じゃねぇ。



 この俺に不意打ちを仕掛けてきやがった、邪悪な刺客だ。




 数秒前のこと――





 


 俺の眼前に敵の鋭い牙が迫っていた。



テメーの首を骨ごと砕いてやるっ!




 箱の中で待ち伏せていたリャクは、俺の首筋を狙って間合いを詰めようとしていた。



 猫にとって首は急所になる。



 さらに猫には人間を凌駕(りょうが)するほどの噛む力がある。

 そのパワーで首に圧をかければ、相手を窒息させ死に至らしめることができるのだ。



調子に乗るなっ!

不意を突かれたところでよけられねぇわけじゃねぇ!




 俺のスピードは相手のさらに上をゆく。



 瞬時に後ろに跳び、リャクの体当たりを受け流す。



よけるな! クソがっ!



うるせー!

よけられるのが悪いっ!




 クソみたいな罵倒に反論しつつ、俺は拳で反撃した。



 狙いは正確だ。

 くり出した拳がリャクの側頭部を打ちすえる。



ってぇ!




 力強く殴り飛ばされて、リャクの体は宙に浮き上がった。







ボス!



俺は無事だ!

心配すんな




 インテリの不安に答えて、すぐさま視線をリャクに戻す。



それにしても、幹部になるだけあってテメェもなかなかやるな


わずかに身をひねって直撃を避けているあたりは、並の猫にはできねぇ芸当だ




 リャクは床に着地し、忌々(いまいま)しげに俺を睨みつける。



チッ! 

おれの不意打ちをかわすとはな


さすが疾風の悪魔!

冥界プルートの名を持つにふさわしい実力の持ち主だぜ



そう、おだてるなって。

テメェにヨイショされても、薄気味悪いだけだ



じゃあ逆に(ののし)ってやる。

死ね死ね! 死ねっ!



おいおい、いきなりブチキレんなよ。

情緒(じょうちょ)乱れすぎだろ



乱れてねーよ! 

至って平常運転だ!



だったら冷静に自分を見つめ直して、汚いやり口を反省するこった


不意を突けば俺を倒せると思ったら大間違いだぞ


 


 とはいえ、箱の中から跳び出してこられたときは、シッポがブワッてなるくらいの驚きがあったのは事実だ。



 いまはもう収まったが、猫ってやつは感情が乱れるとシッポに表れやすい。



 現にリャクの短いシッポは逆立ってやがる。



うるせー! エラソーに!

不意打ちこそ最強の必勝法だ!


さっきのは子どもらが長くしゃべりすぎてたせいでちょっとダルくなって、出足(であし)が遅かっただけだっ



子どもまで利用して罠を仕掛けるとは、卑怯だぞ!




 横合いからインテリがリャクに跳びかかる。


 

ハァッ!




 俺の攻撃を受けたリャクは、着地後起き上がってはいても、まだ床に半分腹がついている状態だ。



 即座に応戦するには不十分。



 そこを追撃するべくインテリが距離を詰めたところで――



ヒョォォォォォッ!




 天井に突き立った鉄骨から、一匹の猫が飛び込んできた。



チッ、邪魔が入ったか



貴様は――!



幹部のトウだな!



ジロリ組のボスめ!

オマエを(ほうむ)るのは、このおれだぁ!




 片腕をピンと伸ばして拳を突き出し、新たなる刺客は俺の頭上へ急接近してくる。



やれやれ。

俺の実力も低く見積もられたモンだぜ




 俺はバックステップしつつ、構えた前足を軽く振った。



ゆるめの猫パンチで牽制(けんせい)か!

ナメるな!




 相手は俺の拳を紙一重でかわし、反撃のパンチを繰り出してくる。



なかなか切れ味は鋭いが、重みがねぇな



うっせぇ!




 俺はトウの拳をよけて、側面に回り込もうとした。



 するとインテリの攻撃を回避したリャクが戦闘に加わる。



挟み撃ちにしてやる!



2対1か。

いいぜ。かかってこいよ



その余裕ぶってる感じ、むかつくわー



軽口たたいたこと、すぐに後悔させてやんよ



自分の実力もわきまえねぇで、なにほざいてんだテメェら!



アッハハハハハハ!



ウッヒャヒャヒャヒャ!



あ?

またしてもイカレフラグが立ったか?




 刺客どもは声を(はば)りもせず、あくびするような大口を開けて笑いだす。



オマエは望むところでもよ~



あっちはどうかな~?




 意味ありげなことを言って、トウとリャクは俺の背後に視線を向けた。



あっち?




 警戒しつつも構えをほどき、振り返ってみると……



なにっ!?



貴様の目は節穴か、プルートよ




 いつの間に現れやがった――!?



 俺たちのはるか後ろの骨組みの上には、ねこねこファイアー組のボス・(くれない)の姿があった。



ボス!

あちら側には、ミミとヨウが――!



クソッ!

厄介なことになったぜ……!
























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登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

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