第83話 度重なる危機
文字数 1,848文字
俺の身に危機が迫っていた。
叫ぶインテリの瞳に、ふっ飛ばされて倒れ込む猫の姿が映っているはずだ。
だがそれは――俺じゃねぇ。
この俺に不意打ちを仕掛けてきやがった、邪悪な刺客だ。
数秒前のこと――
俺の眼前に敵の鋭い牙が迫っていた。
箱の中で待ち伏せていたリャクは、俺の首筋を狙って間合いを詰めようとしていた。
猫にとって首は急所になる。
さらに猫には人間を
そのパワーで首に圧をかければ、相手を窒息させ死に至らしめることができるのだ。
俺のスピードは相手のさらに上をゆく。
瞬時に後ろに跳び、リャクの体当たりを受け流す。
クソみたいな罵倒に反論しつつ、俺は拳で反撃した。
狙いは正確だ。
くり出した拳がリャクの側頭部を打ちすえる。
力強く殴り飛ばされて、リャクの体は宙に浮き上がった。
インテリの不安に答えて、すぐさま視線をリャクに戻す。
リャクは床に着地し、
とはいえ、箱の中から跳び出してこられたときは、シッポがブワッてなるくらいの驚きがあったのは事実だ。
いまはもう収まったが、猫ってやつは感情が乱れるとシッポに表れやすい。
現にリャクの短いシッポは逆立ってやがる。
横合いからインテリがリャクに跳びかかる。
俺の攻撃を受けたリャクは、着地後起き上がってはいても、まだ床に半分腹がついている状態だ。
即座に応戦するには不十分。
そこを追撃するべくインテリが距離を詰めたところで――
天井に突き立った鉄骨から、一匹の猫が飛び込んできた。
片腕をピンと伸ばして拳を突き出し、新たなる刺客は俺の頭上へ急接近してくる。
俺はバックステップしつつ、構えた前足を軽く振った。
相手は俺の拳を紙一重でかわし、反撃のパンチを繰り出してくる。
俺はトウの拳をよけて、側面に回り込もうとした。
するとインテリの攻撃を回避したリャクが戦闘に加わる。
刺客どもは声を
意味ありげなことを言って、トウとリャクは俺の背後に視線を向けた。
警戒しつつも構えをほどき、振り返ってみると……
いつの間に現れやがった――!?
俺たちのはるか後ろの骨組みの上には、ねこねこファイアー組のボス・
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