第117話 エキサイト
文字数 1,787文字
俺たちのいる場所は骨組みだらけだ。
足場の広めな場所もあるが、大半はパイプや鉄骨なので戦闘向きとはいいがたい。
テンダはさっそく身構えるが……
俺としては、トウと戦うインテリが窮地に追い込まれねぇか気がかりだ。
そのとき――
マタタビで狂暴化中のトウがインテリに噛みつこうとしていた。
トウはインテリに口を寄せ、首筋を貫こうとする。
猫の噛む力は強く、死をも招く。
尖った牙がインテリの皮膚に突き刺さる寸前――
場違いな陽気さで、テンダが後ろから割り込んだ。
トウはやや取り乱す。
トウが決定的なアクションを起こす前に、テンダはすでにその背後をとっていた。
が――
テンダのほうが速かった。
テンダはからかうように言って、トウの動きを封じようと攻めかかる。
横倒れるトウ。
その上に覆いかぶさるテンダ。
トウの動きが鈍くなったところを見計らって、テンダはすばやく攻撃にうつった。
懸命にもがいて
宣言どおり、テンダの太い牙がトウの首に突き立った。
首をガブリとやられて、トウは反射的にのけ反る。
が、やられっぱなしでは済まない。
トウは両手をめちゃくちゃに振った。
バシバシバシバシッ!
そのうち数発がテンダの体にヒットする。
テンダはサッと起き上がり、激しい抵抗から身を遠ざける。
トウもその場から立ち上がったが、
怒りに火がついたか、まだ両手をバタバタさせてやがる。
今度はインテリがトウの背後から攻めかかった。
しかしトウは、インテリに攻撃する隙を与えない。
すばやく反転し、手を突き出して威嚇する。
トウは異常な興奮の渦に呑まれて
ニヤニヤする俺とは対照的に、紅は恥ずかしそうにうつむいた。
一方戦闘はトウの牽制が続き、インテリとテンダは攻めあぐねて、足踏み状態になったかに見えた。
すると――
テンダがそろりと足を踏み出す。
テンダは、徐々にトウから離れていく。
メデアは戦いに巻き込まれないよう、金属板の端に下がっている。
チラリと目をやると、
俺の視界に、戦況を見守る小さな子ども猫が映った。
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