第17話 叱られる幹部たち

文字数 1,422文字








にゃっははー! 

腹黒にゃんにゃん、腹黒にゃーん♪



ムムムッ……!


ジロリ町の諸葛孔明(しょかつこうめい)と呼ばれしこの私を愚弄(ぐろう)するとは、いくらマウティスでも許せませんよ!



にゃはー!

インテリがそんなふうに呼ばれてるのにゃんて、聞いたこともないにゃ


そもそもインテリが孔明なら、ウチはそれにも勝る司馬仲達(しばちゅうたつ)、もしくは太公望(たいこうぼう)でもいいくらいにゃも!



なんだそりゃ。

オメェらがよく話してる歴史上の人物ってやつか?



そうにゃも。

諸葛亮(しょかつりょう)司馬懿(しばい)も、戦いに勝つためのアイデアをひねり出す軍師なのにゃ



んで、マウティスがその軍師ってか?

オメェのような怠慢(たいまん)軍師がいてたまるかよ



ぷにゃんぬ!

怠慢じゃにゃいも!



いいえ、そのとおりです!

ボス、もっとあの(よこしま)な猫を責め立ててください!



ハァ~……



どうしました? ボス



いや、俺が言いてぇのはだな、オメェらはいつまで集会のルール無視してモメてんだよってことだ!



ウチは悪くにゃいも!



私を侮辱(ぶじょく)するマウティスが悪いのです!



さんざんモメておきながら責任逃れかよ


みんなの上に立つ幹部が争ってたら、組の連中に示しがつかねーだろ!



そうだけどにゃあ



事情がある場合はやむを得ないかと



フン、そーかよ!

だったら、俺としてもやむを得ねぇな




 ブチキレたいわけじゃねぇが、仕方ねぇ。



 ここは俺の激怒モードを炸裂させて、示しをつけてやるとするか――!







集会でのケンカはルール違反だぞ!

違反しつづけるなら俺が許さねぇ!



にゃわ……!



にゃわわ……!




 俺の怒りを受けて、ジロリ組の幹部たちは怯みだした。



 ふたりがあからさまに動揺するのは珍しいが、それだけ俺を恐れているのだろう。



 猫も感情ある生き物だから、自分より強いヤツには恐れを感じるようにできている。



 実際、俺とヤツらとの実力差は歴然(れきぜん)だった。



これ以上モメ続けるなら、俺の拳で仲裁してやってもいいんだぞ!?



ふ、ふにゃ……!



失礼しました……!




 俺がふたりのほうへゆっくり歩むと、インテリは秒でその場を離れて距離を取った。



 マウティスも怖気(おじけ)づいたようにサッと退(しりぞ)く。



ボスにゃんの猫パンチは喰らいたくないにゃ。

当たったら確実に毛がハゲるにゃも!



だったら俺の言うことを聞け~!


ガニャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!




 俺の咆哮は荒れ狂う雷鳴のようだと恐れられている。



 ひと声咆えれば吐息は魔風のごとく、雄たけびは落雷のごとく、辺りを恐怖一色でつつみ込むほどだ。



親分さん、えらい怒ってはる……!



毛づくろいしてる場合じゃなさそうデスネ



ああぁぁぁ! 怖いよぉぉぉ!

こここ、殺される~~~っ!



殺されはしないけど、近づかないほうがいいわ!





 猫たちは場を圧するような俺の激しい雄たけびに畏怖(いふ)し、こぞって耳を伏せると、恭順(きょうじゅん)を示すようにピシッと前足をそろえた。



いいかオメェら!

意見が割れたときにゃ〝多数決を取る〟のがこの集会の掟だ!


新入りの妹さがしを手伝うヤツ、手伝いたくないヤツに分かれろ!



ハヒィーーー!


フヒィーーー!




 猫たちは芝生をバタバタ踏みつけて、右へ左へ右往左往(うおうさおう)しはじめる。




 さーて、どうなることやら。




 俺の叱責がどこまで功を奏したのかわからねぇが、ひとまず結果を見てから判断しようじゃねぇか。



















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登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

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