第84話 度重なる危機②
文字数 1,541文字
俺たちの
紅だけでなく、これみよがしにイキがる幹部ども。
ちょっと気配を隠すのが得意だからって、調子こいてんじゃねぇ!
反論したくなるが、いまはそんなくだらねーことに時間を使ってる場合じゃなさそうだ。
ミミならまだしも、ヨウは戦闘に不向きだ。
紅に襲いかかられたら、速攻で沈められてもおかしくねぇ。
威勢よく言い放って、紅がミミとヨウめがけて走り出す。
俺が大声で呼びかけると、ふたりは振り返ってギョッとした。
ミミよりも、ヨウのほうが動揺しまくりで騒ぎだす。
なにしろ日頃から毛に関することに敏感なヤツだからな。けど落下したら、毛が汚れるどころか大ケガしちまうんだぜ。
ふたりは大慌てで管の上を疾走する。
平地に比べたらスピードは落ちるが、悪くない走りだ。
紅から距離を取ろうと奮闘する姿は、懸命で殊勝でもある。
だが――
場所も相手も悪かった。
どうにかしてやりたいが、俺が持てる力をすべて出し切って全力疾走しても追いつけない。
せめて数メートル離れた程度の距離だったら、対処できたかもしれねぇが……
紅は弾みをつけて進行方向に跳躍した。
口をひらき、標的に狙いを定める。
ヤツの狙いは――ヨウだ。
ミミの後ろを走っていたヨウが一瞬加速し、紅との距離がわずかにひらく。
けれども、紅の速さには
ヨウのシッポに紅が跳びつく。
直後、ヨウの悲鳴が辺りに響き渡る。
ヨウは苦痛に
手足をジタバタさせながらヨウはもがく。
が――!
次の瞬間、ヨウの片足がパイプの表面をツルッと滑った。
クソ! 最悪の展開だ……!
ヨウの体は闇に吸い込まれるように暗い床のほうへと落ちていってしまう。
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