第84話 度重なる危機②

文字数 1,541文字




 俺たちの(すき)をついて、突如(とつじょ)紅が出現しやがった。







闇に身を潜め、気配を殺し、敵を仕留める――


猫が兼ね備えし能力を限界まで引き上げた暗躍術(ダークスキル)、思い知ったか!



ケッ!

なにがダークスキルだ!



さては気配を察しきれず、悔しいのだろう?



おれたちは親分のもとでそのダークスキルを鍛えあげたんだ! 



ナメてかかると痛い目みるぜ!




 紅だけでなく、これみよがしにイキがる幹部ども。



 ちょっと気配を隠すのが得意だからって、調子こいてんじゃねぇ!



 反論したくなるが、いまはそんなくだらねーことに時間を使ってる場合じゃなさそうだ。



ボス! 

早くミミとヨウのもとへ駆けつけなければ――!



ああ!


……ってアイツら、細い管の上に移動してるじゃねぇか!



おそらくこちらに加勢しようと移動してくれていたのでしょう



細い管は足場が狭いし滑りやすい


そのうえ真っ逆さまに落ちた先の床は、ガラス片地獄(トラップ)が待ち受ける危険地帯だぞ!



危険だらけの死地といっても過言ではありませんね



ミミとヨウを一緒に連れてこなかったのは、失敗だったか……




 ミミならまだしも、ヨウは戦闘に不向きだ。



 紅に襲いかかられたら、速攻で沈められてもおかしくねぇ。



貴様らなど戦うまでもない!

この手で突き落としてくれる!




 威勢よく言い放って、紅がミミとヨウめがけて走り出す。



ふたりとも、紅が後ろに近づいてるぞ! 


ヤツはオメェらをガラスまみれの床に突き落とすつもりだ!

落下させられないよう、足場の広い場所に逃げろ!




 俺が大声で呼びかけると、ふたりは振り返ってギョッとした。



エエエェーーーッ!

突き落とされるのは嫌よぉ!



No~~~~~~~!?

あそこに落とされたら毛が大変なことに……!




 ミミよりも、ヨウのほうが動揺しまくりで騒ぎだす。



 なにしろ日頃から毛に関することに敏感なヤツだからな。けど落下したら、毛が汚れるどころか大ケガしちまうんだぜ。



急いで足場の広い場所に移動しなきゃ!



ラジャー!




 ふたりは大慌てで管の上を疾走する。



 平地に比べたらスピードは落ちるが、悪くない走りだ。



 紅から距離を取ろうと奮闘する姿は、懸命で殊勝でもある。




 だが――




 場所も相手も悪かった。



ジロリ組の連中は鈍足だな!

食べてばかりいて肥えているからだろう!


その程度の走りでは、おれから(のが)れられんぞ!



ちょっとやばいっ!

追いつかれる――!



Ahhhh!

これ以上速く走れないデス……!



クソ!

このままじゃ追いつかれる!



紅はこのり組んだ空間を完全に制しているようですね……!




 どうにかしてやりたいが、俺が持てる力をすべて出し切って全力疾走しても追いつけない。



 せめて数メートル離れた程度の距離だったら、対処できたかもしれねぇが……



捉えたぞ!




 紅は弾みをつけて進行方向に跳躍した。



 口をひらき、標的に狙いを定める。



 ヤツの狙いは――ヨウだ。



ヨウ!

後ろに来てるぞ!



Ahhhh~~~ッ!




 ミミの後ろを走っていたヨウが一瞬加速し、紅との距離がわずかにひらく。



 けれども、紅の速さには(かな)わなかった。



喰らえーっ!




 ヨウのシッポに紅が跳びつく。



 直後、ヨウの悲鳴が辺りに響き渡る。



Oooooooouchア~~~~ウチ!!




 ヨウは苦痛に()()り、バランスを崩しだした。



ヨウ! (こら)えろっ!



踏みとどまるんだ……!



アウアウアウゥ~~~ッ!




 手足をジタバタさせながらヨウはもがく。



 が――!



 次の瞬間、ヨウの片足がパイプの表面をツルッと滑った。



ゲッ!



アッ……!



落ちちゃダメ~~~!



Opus!

無理デス~~~ッ!




 クソ! 最悪の展開だ……!



 ヨウの体は闇に吸い込まれるように暗い床のほうへと落ちていってしまう。







ヨウ~~~~~~ッ!


























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登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

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