第92話 反撃
文字数 1,285文字
獰猛な野獣と化した副ボスが、牙を剥いて襲いかかってくる。
猛スピードで迫る巨体。
華麗にかわすなんてワイには無理や。
一瞬、副ボスが躊躇したように見えたが――
やっぱり勢いは
水にとび込む魚みたいな勢いで、副ボスの体がワイの上にダイブしてきた。
となみにワイの体は飼い主によると、4キロちょっとしかない。
副ボスの体重は何キロあんねやろ。たぶん骨太な体格からいって、6か7くらいはいっとるはずや。
そんなのが覆いかぶさってくるんやから、息苦しいに決まっとる。
首噛まれるよりマシやけど……しんどい。
……何言うても無視や。
副ボスは意味不明の咆哮を発して、ワイの首にかじりつこうとしてくる。
おもわずワイまで意味もなく叫んでもうた。
首をひねってどうにかよけられたけど、攻撃は一度では終わらへん。
眼前で噛みつきラッシュが幾度となく展開される。
ワイは手足をジタバタさせて抵抗した。
考えなんてあらへん。ただ必死にもがいただけや。
すると――
副ボスの行動に異変が生じる。
なんも受けてへんのに顔をしかめて後ろへ下がった。
ワイの攻撃は一発も当たっとらん。
にもかかわらず、副ボスは悲鳴をあげよった。
副ボスがやや引いたおかげで、ワイの体を抑え込んでいた力がいくらか緩む。
ワイは仰向けのまま、体をクネクネさせて背面歩きした。
はたから見るとふざけてるみたいに見えるけど、背筋使うし、大急ぎでやるのは結構大変や。
その甲斐あってすばやく体の位置をずらすことには成功した。
ワイの手足が、ちょうど副ボスの顔面を狙うに足るポジションに収まる。
ワイは勢いよく手足を動かす。
狙うは、副ボスの顔や。
暴走する相手には自分も暴れて反撃する。
単なるやっつけ攻撃法やけど、これにはちゃんと意味がある。
じつはドヤれるほど、攻撃は当たってへん。
副ボスは反撃を喰らってたまるかと体を反らしとったから、ワイの手足はほとんど宙を漕いでただけや。
せやけどワイの攻撃を受けて、副ボスは後ろに仰け反った。
このまま形勢逆転して、ワイ大活躍!
そんな展開になったら最高なんやけどな……。
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