第92話 反撃

文字数 1,285文字




 獰猛な野獣と化した副ボスが、牙を剥いて襲いかかってくる。



シネェェェェェェェッ!



ゲェーッ!

もうアカンわ!




 猛スピードで迫る巨体。



 華麗にかわすなんてワイには無理や。



こうなったらイチかバチかや!


ハニャッ!




 自ら腹を広げて、コテンと草地に倒れ込む。



――!?




 一瞬、副ボスが躊躇したように見えたが――



ウガァァァッ!




 やっぱり勢いは(くじ)けてへん。



 水にとび込む魚みたいな勢いで、副ボスの体がワイの上にダイブしてきた。



ぐっへぇ!

重っっっ……!




 となみにワイの体は飼い主によると、4キロちょっとしかない。



 副ボスの体重は何キロあんねやろ。たぶん骨太な体格からいって、6か7くらいはいっとるはずや。



 そんなのが覆いかぶさってくるんやから、息苦しいに決まっとる。



 首噛まれるよりマシやけど……しんどい。



テンダ兄さん、目ぇ覚ましてください!



ヴガッ! ヴガガッ!



ウガウガ言われても、何言うてるかサッパリわかりませんて……



ウガァァァァァァッ!




 ……何言うても無視や。



 副ボスは意味不明の咆哮を発して、ワイの首にかじりつこうとしてくる。



かっ、かじらんといて――


ハニャアァァァアッ!




 おもわずワイまで意味もなく叫んでもうた。



 首をひねってどうにかよけられたけど、攻撃は一度では終わらへん。



 眼前で噛みつきラッシュが幾度となく展開される。



アカン!

これ以上は耐えられへん……!



終わりだァッ!



ちょま~~~~~~っっっ!




 ワイは手足をジタバタさせて抵抗した。



 考えなんてあらへん。ただ必死にもがいただけや。



 すると――



ヴギャアッ!




 副ボスの行動に異変が生じる。



 なんも受けてへんのに顔をしかめて後ろへ下がった。



エ……?

なんでや?




 ワイの攻撃は一発も当たっとらん。



 にもかかわらず、副ボスは悲鳴をあげよった。



どーゆうこっちゃ……?


あっ、もしかして――!?




 副ボスがやや引いたおかげで、ワイの体を抑え込んでいた力がいくらか緩む。



チャンスや!




 ワイは仰向けのまま、体をクネクネさせて背面歩きした。



 はたから見るとふざけてるみたいに見えるけど、背筋はいきん使うし、大急ぎでやるのは結構大変や。



 その甲斐あってすばやく体の位置をずらすことには成功した。



 ワイの手足が、ちょうど副ボスの顔面を狙うに足るポジションに収まる。



行っくでー!

必殺・暴走返しや!








 ワイは勢いよく手足を動かす。



 狙うは、副ボスの顔や。



ただ手足をジタバタさせとるように見えるけど、駄々っ子ちゃうで!


これは言うならば、猫パンチと足蹴りのミックス技や!




 暴走する相手には自分も暴れて反撃する。



 単なるやっつけ攻撃法やけど、これにはちゃんと意味がある。



ドヤッ! 

ワイの暴走返しは!




 じつはドヤれるほど、攻撃は当たってへん。



 副ボスは反撃を喰らってたまるかと体を反らしとったから、ワイの手足はほとんど宙を漕いでただけや。



 せやけどワイの攻撃を受けて、副ボスは後ろに仰け反った。



ヴグッ……!



一撃も喰らってへんのに顔をゆがめとる


思ったとーりや!

これは手ごたえありやな!




 このまま形勢逆転して、ワイ大活躍!



 そんな展開になったら最高なんやけどな……。
























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登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

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