第143話 ボス vs ボス
文字数 1,260文字
視界を
俺の指先が、
パシッ!
シッポを掴んだと思ったら、爪に絡んだのはただの毛だった……。
非難した直後、紅が俺の顔にシッポをぶつけてくる。
かわそうとしたが間に合わない……!
長いシッポが顔の下半分に直撃する。
そのとき勢いに乗って、抜け毛の一部が俺の口の中に入りこんできた。
長い毛が舌に絡み、さらに喉の奥にもまとわりつく。
紅は俺の構えが解けているところを突いて、脇腹に数発浴びせてくる。
耐えられねぇほどじゃねぇが、地味に痛てぇ……。
慌てて後ろに退くと、紅が勝ち誇った顔で言う。
反論するや否や、紅がシッポをぶつけてくる。
俺がそれを振り払おうとすると――
紅は不意を突いて、噛みつき攻撃を仕掛けてきた。
拳をふるい、紅の頬を打つ。
バシッ!
たしかな手応えはあった。
だが、紅は
俺は片腕を振り上げ、拳をくり出す。
気合いの
紅も負けじと応戦してくる。
互いの拳が激しく衝突し、
柔らかな肉球が衝撃を最小限に抑えるも、熱いダメージが手のひらからじわじわと
しかし紅は疲れたのか、拳の動きが鈍りはじめた。
俺は警戒しつつも、一歩前へ踏み出す。
すると紅は、赤毛模様の冴えわたる体をあざやかに旋回させた。
とっさに前足を浮かせて、後方に背を反らす。
二本足で立つと、上体への攻撃はよけやすい。
けれども前足による支えを失って、体が不安定になる。
運悪く足場は途切れて、後ろを支えるものは何もない――
最悪……!
自業自得の自滅フラグだ……!
俺はバランスを崩して、金属板から落下した。
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