第80話 待ち受けるもの③
文字数 2,305文字
細い
古びたパイプはザラついてるが、地面に比べりゃ絶望的に
それでも狭き道を越えて先へ進もうとしたものの――
仲間のことが気になり、俺は立ち止まって振り返る。
というわけで――
先に周辺の様子を探るため、足を負傷したミミと、あまり狭い場所での移動が得意じゃないヨウを残し、俺は狭き道を前進していく。
真後ろにはインテリがいて、俺と同じ歩調を刻みながらトコトコ歩いている。
骨組みの四隅には、人間でも通れそうな格子状の網板がかかっている。
猫ならば何体も寝ころべそうなくらい広い。
そのうちの一か所に色褪せた箱が2つ並んでいる。
俺たちが接近すると、得体の知れない気配が膨れあがった。
敵はかなり緊張しているようだ。
俺たちの存在はもうねこねこファイアー組のヤツらに知られているだろうが、会話を聴き取られないよう声を落としてインテリに話しかける。
ヒソヒソ密談しながら歩いていると、分岐する道にぶつかった。
パイプが左右に分かれていて、Y字のようになっている。
先にインテリが枝分かれした右の道を進んでいく。
俺は反対に左側の細い管を直進する。
どちらのパイプも金属板の連結した広場へとつながっている。
箱が置いてあるのは、その広場の奥の壁際だ。
俺はササッと移動を済ませると、金属板に前足をかけた。
数メートル離れた右手側にいるインテリへ顔を動かし、合図を兼ねてうなずく。
俺が動くと、インテリも走り出した。
すると――
相手側にも動きアリ!
黒い影がダッと躍り出る。
跳び出してきたのは予想どおり、複数の猫だ。
どうやら箱の裏側に身を隠していたらしい。
猫たちは箱の裏から跳び出すと、いきなり全力疾走しだした。
ろくに戦ってもいねぇのに、必死で俺たちから
右へ左へ、猫たちはそれぞれ真逆の方向に向かって一目散に駆けていく。
俺とインテリは相手の行動を読んで先回りし、その進行方向に立ちはだかった。
あっという間に回り込まれて、赤毛の猫たちは悔しそうに歯を噛みしめる。
そして必死に足を動かしていた甲斐もなく、その場に立ち止まってしまった。
この猫ども……
よく見ると、顔立ちが幼い。
片方の少年猫は顔が丸いが、全長がオトナ猫に達しているかというとそうでもない。
子どもたちはビビッているのか、成長不足の体に猫らしい条件反射で毛を少し立たせている。
似た顔同士が張りつめた表情でぼやく。
どっちが上かはわからねぇが、たぶん姉弟だろう。
声も色柄もソックリだ。
……正直やりづらい。
猫界隈にもルールがあって、子ども相手に大人がムキになったり、本気でやり合うのはよろしくないのだ。
少女猫のほうが口ごもると、もうひとりの少年猫のほうが俺を警戒しながら
俺がしゃべるよう促しても、子どもたちはちっとも応じずに、ふてくされたような表情で黙りつづけている……。
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