第40話 嫉妬する猫
文字数 1,349文字
ボスたちは道路を渡ると、駐車場のほうへやって来た。
ワイはボスのもとへ駆け寄るや否や、他の誰よりも早く気になってしゃあないことを口に出す。
ちょっと訳ありでよ、この猫には事情があるんだが――
どうせ発情猫の香りにほだされて、ニャン♡ニャン楽しんでたんでしょっ
と言いつつ、メス猫との関係を疑う心情がダダ
洩れしとるで
インテリ兄さんもヨウも、ボスの後ろにいるメス猫を怪しむように見つめとる。
メス猫から放たれるフェロモンのせいか、ふたりの表情にはいつものゆとりがあらへん。
やーねぇ、ムラムラしてるオスって。
ホント見境がないんだから!
ボスは悪くありません!
あたしが勝手に、ボスの彼女にしてくださいって頼んだんです!
大胆どころか、卑しいメス猫だよ! まったく……っ!
そうだぞ、ミミ。
だいたいオメェは俺の嫁でもなんでもねぇだろが
ぐぬぬぬぬっ!
その言い草、アタシに亭主がいないとバカにする気かぁ~っ!
へぇー、亭主がいないとは意外だな。
こんなにカワイイのに
はっはっはっ。底なし沼か。
言い得て妙かもしれないな
この副ボスとは、以前何度か話したことがある。
寛容っちゅうか、人柄がおおらかやねん。
ウフッ、ウフフフフッ♪
どうやら違いのわかるオトコが現れたようね
たちまち
悦に
入って、ご機嫌モードになるミミ。
まぁミミみたいにしょっちゅうブチギレるメスには、ちょうどええ相手かもしれへんけど……
どっちかいうと、副ボスは連れてきたメス猫に興味ありげに見えたんは気のせいやろか?
ねぇ、副ボスさん。
なんならアタシの魅力にひれ伏してくれてもよくってよ?
ひれ伏すのは構わねえけど、さきにニオイを嗅がせてほしいな
ミミはさっそく副ボスの体に近づいた。
鼻をクンクン小刻みに動かして、相手のニオイを隈なく嗅いでゆく。
たくましいって……、
それ嗅がんでも見た目でわかるやつやん
うるさいわねっ。
イケメンを見た目と香りで楽しむのが乙女の醍醐味なのよ
さすが親分さんや。
ちょうどワイの言わんとしていたことをツッコんでくれる。
するとミミは、オス猫も怯むほどの形相になって言い放った。
100年の恋も、
「間違いやったわー」で終わるパターンやで!
ワイの指摘を受けて、怒れるミミはその場にギョッとしたように固まった。
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