第40話 嫉妬する猫

文字数 1,349文字




 ボスたちは道路を渡ると、駐車場のほうへやって来た。






親分さんっ! 




 ワイはボスのもとへ駆け寄るや否や、他の誰よりも早く気になってしゃあないことを口に出す。



そのメス猫、どないしはったんですか!?



川沿いの土手で知り合ったんだ


ちょっと訳ありでよ、この猫には事情があるんだが――



フン! 

事情なんて聞きたくないわよ!


どうせ発情猫の香りにほだされて、ニャン♡ニャン楽しんでたんでしょっ



ミミ! 

ボスに向かって失礼だぞ!



ソウデスヨ。

落ち着いてクダサイ



と言いつつ、メス猫との関係を疑う心情がダダ()れしとるで




 インテリ兄さんもヨウも、ボスの後ろにいるメス猫を怪しむように見つめとる。



Umm(ウーン)……



フゥッ……



……




 メス猫から放たれるフェロモンのせいか、ふたりの表情にはいつものゆとりがあらへん。



ボス。

実際のところどうなのですか?



なんもねぇよ



やーねぇ、ムラムラしてるオスって。

ホント見境がないんだから!



だから邪推じゃすいするなって!



ボスは悪くありません!

あたしが勝手に、ボスの彼女にしてくださいって頼んだんです!



ボスの彼女に!?



Wowワォ



お前さん、見た目に反して大胆やな



大胆どころか、いやしいメス猫だよ! まったく……っ!



ヨ、ヨツバちゃんになんてことを……!



そうだぞ、ミミ。

だいたいオメェは俺の嫁でもなんでもねぇだろが



ぐぬぬぬぬっ! 

その言い草、アタシに亭主がいないとバカにする気かぁ~っ!



へぇー、亭主がいないとは意外だな。

こんなにカワイイのに



カッ、カワイイ!?



Woooow!(ウワァー)



さすが副ボス! 

度量が広いのでありますっ!



ホンマや!

まるで底なし沼の包容力やで……!



はっはっはっ。底なし沼か。

言い得て(みょう)かもしれないな




 この副ボスとは、以前何度か話したことがある。



 寛容っちゅうか、人柄がおおらかやねん。



ウフッ、ウフフフフッ♪

どうやら違いのわかるオトコが現れたようね




 たちまちえつって、ご機嫌モードになるミミ。



 まぁミミみたいにしょっちゅうブチギレるメスには、ちょうどええ相手かもしれへんけど……



 どっちかいうと、副ボスは連れてきたメス猫に興味ありげに見えたんは気のせいやろか?



ねぇ、副ボスさん。

なんならアタシの魅力にひれ伏してくれてもよくってよ?



ひれ伏すのは構わねえけど、さきにニオイを嗅がせてほしいな



いいわよぉ。

でも、アタシが先ねぇ




 ミミはさっそく副ボスの体に近づいた。



 鼻をクンクン小刻みに動かして、相手のニオイを隈なく嗅いでゆく。



あぁ……たくましいオスの香り



たくましいって……、

それ嗅がんでも見た目でわかるやつやん



うるさいわねっ。

イケメンを見た目と香りで楽しむのが乙女の醍醐味なのよ



オメェが変態なだけだろ!




 さすが親分さんや。

 ちょうどワイの言わんとしていたことをツッコんでくれる。



 するとミミは、オス猫も怯むほどの形相になって言い放った。



ケェーーーーー! 

おだまりっ!



Ouch(アウチ)

ミミさんが怒りモードに……!



ヒッ、ヒエェェェェェッ!



ミミ! 

このタイミングでブチキレたらアカンやろ


100年の恋も、

「間違いやったわー」で終わるパターンやで!



なっ!?

100年の恋も終わるだと……!?




 ワイの指摘を受けて、怒れるミミはその場にギョッとしたように固まった。





















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登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

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