第35話 恋の暴走
文字数 2,171文字
ボスはすばやく体勢を転じ、突き出した拳で副ボスの体をベシッと払いのける。
地面をころりんと転がる副ボス。
攻撃をうまくいなしてるようで、ダメージを受けた感じはない。
副ボスは両腕を広げ、もう一度ヨツバちゃんのほうに跳び込んでいく。
けど、ボクはパニくったまま身動きもできない。
副ボスがヨツバちゃんに迫る瞬間――
ボスが雷みたいな速さで突進した。
ボスは瞬時に副ボスの前に立ちはだかると、さきほどよりも勢いをつけて拳をふるう。
バシッ――!
今度こそ副ボスはふっ飛ばされて、地面に突っ伏した。
一方ヨツバちゃんは後ろに下がり副ボスから距離をとると、迷惑そうに感情をはき出した。
起き上がりつつ前足で顔を洗いながら、副ボスは戸惑い気味にこぼす。
ちょっと思い浮かべてしまいそうになったけど、やめた。
なんとなく想像したらいけない気がする……。
ボスに叱られて、ボクは身をすくめた。
小柄なボクが身を縮めると、女のコのヨツバちゃんより小さく見えてしまいそうだ。
や、やっぱり女のコは、ボスとか副ボスとか、強そうで地位のあるほうが好きなのかな……。
ヨツバちゃんはいますごく困っていて、助けを求めているんだ。
どうにかしてあげたい。
力になってあげたい。
だけど……
ボクは溜息をつきながら空を見上げた。
そのときだった。
一羽の鳥が上空を滑空しながら近づいてきた。
白くて小さめの鳥が青空を切るような鋭さで翔けている。
何の目的があるのか知らないけれど、鳥はボクらのほうへ一直線に向かってきた。
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