第105話 遭遇
文字数 1,488文字
じぃ~……。
得体の知れないヒモを隅々まで眺める。
ヒモにあまり動きはねぇ。
けれどもシャッターと壁の隙間から先端をはみ出させたまま、時折ちょこちょこと落ち着きがない。
愚痴をこぼして、ふぅーと大きなため息をつく。
無意味なやり取りに見えるが、これはあくまで俺の作戦だ。
ヒモが逃げないよう、何食わぬ素振りで近づく。
相手の動きが完全になくなったところで――チャンスだ!
シュッとすばやく片手を突き出す。
ピシッ!
油断して静止状態だったヒモは、
猫を飼っている人間も、このフェイント攻撃に一本取られるヤツは後を絶たないという。
視線をヒモの奥のほうやって、気配を探る。
シャッターに阻まれていても問題はねぇ。
俺の耳にかすかな動物の息遣いが聴こえてきた。
向かい側のヤツらに聞き取られる可能性はあるが、上にいる紅たちに聞かれることはまずない。
ヨウは俺の手のそばに、そっと自分の手を添えた。
ヒモに気を取られているあいだに俺が小部屋に侵入する。
俺はそっと付近のガラクタに跳び乗ると、シャッターを見上げて狙いを定めた。
弾みをつけて、いざジャンプ!
優れた筋力がバネとなり、2メートル先だろうが跳び越える。
個体差はあるが、猫ってやつは極めて運動神経万能な生き物だ。
壊れたシャッターの断面を難なく通過し、薄暗い小部屋の中へと突っ込んでゆくと――
――中に入った途端、おもいがけないモノが目に入った。
床に着地と同時に、そいつらを凝視する。
壁際に身を寄せているのは、例の姉弟猫だった。
ふたりの手元には例のヒモがある。
それを手で動かして、ヨウの興味を引いていたのは間違いなさそうだ。
この猫たちに嫌がらせを食らうのは、これでもう二度目だ――。
俺が
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