第24話 みんなでスメルチェック 後半
文字数 1,513文字
新入りは尻をモゾモゾさせて、俺に肛門をさらけ出すのをためらっている。
そ、そうですけど……。
ボ、ボスにおしりを向けるだなんて、畏れ多いとゆうか……
俺が声を荒げると新入りはその場に固まった。
その隙に新入りの背後にすばやくまわり込み、尻に鼻を近づける。
ニオイを正確に嗅ぎ取るため鼻を小刻みに動かし、何度も息を吸い込んだ。
くんかくんか……。
くんかくんか……。
ちょっ……ボス!
そ、そんなにじっくり匂わないでください……っ
我ながらムセちまうとは情けねぇ。
俺は新入りの尻から離れて深呼吸をし、汚染されかけた鼻のクリーン化に努めた。
まあな。新入りの体から嗅ぎ取ったニオイを吟味し、有益な情報を得たぞ
新入りの体にしみついたニオイには、俺やオメェらにはない特徴がある
複雑に絡み合ったニオイの中から、ほんのわずかだが〝ダンボールのニオイ〟がした
それも新品のダンボールじゃねぇ、古臭ぇ家のニオイのしみついたダンボールだ
そ、そのダンボールって、ボクらが捨てられたときに中に詰められた、あの箱ですか……!?
古臭ぇ家のニオイは、おそらくオメェの住んでいた家のニオイだろう
す……すごい……!
そんなことまでわかるなんて……!
どんなときでも冷静に状況を見極める。
野良猫としての経験の差がモノをいうわね!
私の縄張り巡回ルートにあの下々家の家も入っていたので、お役に立てるかもしれません
インテリは新入りのそばに寄ると、その尻にそっと顔を近づけた。
ええ、たしかに。
虫唾が走るような臭気をかすかに感じます
おそらくゲゲドウ宅の家屋のニオイでしょう
〝古くて臭い家のニオイのしみついたダンボール臭〟が新入り兄妹を結びつけるヒントってわけにゃね
ああ。
それをもとに捜索すれば、どこかで新入りの妹の痕跡を見つけられるはずだ
みんな新入りの尻に群がると、生真面目な顔を並べて鼻の穴をヒクヒクさせた。
新入りは羞恥心でいまにも逃げ出しそうなほどだが、それでもちゃんとスメルチェックしやすいよう尻を上げ気味にしている。
なかなか協力的な姿勢だ。
行方知れずの妹を見つけたい一心で恥辱に耐えているのだとしたら、まじで健気としかいいようがねぇ。
hmm……。
言われてみれば薄っすらダンボールのニオイがしますネ
薄汚れた絨毯や座布団のニオイもするわ
さっきはキンメのオナラのせいでスメルチェックどころじゃなかったけど、いまならわかるわね
ホントかすかにだけど、いかにも手入れの悪い古びた家って感じのニオイがするにゃも
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