第65話 危険な戦い
文字数 1,878文字
ねこねこファイアー組のボス・紅の出現に、狼狽するモブニャン。
驚くのも無理はないにゃ。
さすが組の頂点に君臨するだけあって、たいした隠密スキルにゃも。
大げさに言えば、赤外線センサーを搭載してないと気づかないレベルにゃよ。
モブニャンは恐怖で地面に張りついたまま、ちょっと意外そうに目を白黒させている。
モブニャンは、ウチと紅の顔を交互に見比べながら、じりじりと後退する。
震えるような声を絞って、モブニャンは廃工場を囲う野原へ駆け出していった。
去っていく元・組員を遠巻きに見ながら、不満そうに吐き捨てるボス猫。
ウチはその目線がこちらへ向く前に、前足をやや突き出して臨戦態勢に入る。
「始めるとするかにゃ」
なーんて、悠長なことは言ってられにゃいも~。
言葉より先に駆け出す。
さもこれから戦う的な雰囲気を作っておきながら、一目散にトンズラ作戦遂行にゃ!
塀からぴょーんと飛び降りて、ダダダーッと野原を疾走、疾走、疾走にゃー!
ちゃんと先に逃げたモブニャンに配慮して、進行方向は真逆の方角にしておいたけどにゃ。
猫界隈では、勝敗の行方の握るのは体格差と相場が決まっている。
自分が相手より小柄なら、パワー押しの一手だけじゃ不利な戦況に追いこまれやすい。
と、余裕だったのも
振り返れば、ウチの背後に紅の姿が――!
紅の体がふわりと宙に舞う。
大きな体が、このマウティスの頭上を軽々と飛翔する。
まるで炎がこの身を覆いつくすかのような勢いで跳びかかってきた。
眼前に迫る鋭いの牙。
紅が仕掛けようとしているのは噛みつき攻撃にゃも。
噛みつき攻撃は、猫の繰り出す技の中で最も強烈で威力が高いのにゃ。
自分自身へ命を下し、横に飛び退いてかわす。
相手の牙をむいた顔がわずかに遠ざかる。
間一髪、難を避け危機を脱したかに思えたにゃ。
しかし紅は百戦錬磨で有名にゃ。
攻撃をかわされたと知って、すでに次の一手を繰り出している。
地に着地するとほぼ同時に、前足を振り上げていた。
憎たらしいほど無駄のない動きにゃ。
間を置かずに攻めかかるなんて、相当戦い慣れした動きにゃも。
白い毛の内に隠された爪が露出し、ギラリと悪魔的な光を放つ。
さらなる危険がウチの身に迫っていた……!
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