第18話  第五章「白いワンピースなお姫さま」(1)

文字数 474文字


 そこは小学校の廊下だった。
 そいつは、ただ殴り続けていた。
 馬乗りになって、何発も何発も、硬く握り締めた拳を、自分の顔面にぶつける。
 何発も、何発も。
 ただひたすらになぐり続ける。
 周りの子供たちが騒いでいる。
 教師が騒ぎに気づき、少年を止めようとする。
 しかし、大人の力をもってしても留めることができないほど、強い力がこもっていた。
 ただ疑問だけが浮かんでいた。
 殴られた痛み、次に怒り、それを口にする前に、そいつは自分を押し倒し、ひたすらに殴り続ける。
 いままでこんなことはなかった。
 ケンカを売るのはいつも自分のほうで、いつも「しょうがないなぁ」と言いながら涼しい顔で自分を負かしていた。
 なのに、その日はいきなりだった。
 目を合わせた瞬間、いきなりそいつから自分に殴りかかってきたのだ。
 なにも言っていない、なにもしていない。
 なのに、ただ、そいつは自分を殴りつけている。
 逆光になって顔がよく見えない。
 なにかが、鼻血にまみれた、腫れ上がった顔に当たった。
 冷たい、しょっぱいなにかが当たった。

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