第6話第二章「お姫様は美少年」(3)
文字数 1,275文字
三時間目、の前の休み時間。
「元譲、なにやってんだい?」
「しっ! 静かにしろ」
物陰にマヌケなコソドロのように張り付いている元譲に、声をかける光也。
「今・・・尾行してんだよ」
「尾行って、誰を・・・」
答える代わりに無言で廊下を歩くソアラを指刺した。
「なに、やってんの?」
見た上で改めて問い直した。
「アイツは男だ、それは間違いねぇ・・・証拠を掴んでやる」
友人を疑うわけではないが、光也も「ソアラがおとこのこ」という話は半信半疑だった。
「確かに、ちょっと信じがたいけど。でも、どうやって調べるつもり・・・まさか!?」
一瞬、十八禁と言うか、ダイナミックプロばりに「ギャハハハハー」と叫びながらソアラの服をビリビリに破り散らす姿を想像してしまった。
「王子様だろうが、お姫さまだろうが、食うもん食えば出すもん出すだろ、ヤツが男子トイレに入った現場を押さえてやる!」
「あ、そっち・・・」
殺気に満ちた顔をしているわりには、小学生のような方法である。
「お、動いた!」
階段を降り、一人でどこかに向かい始めるソアラ。
その後ろをマヌケな探偵のようにコソコソと尾行する 。
光也もおもしろそうなのでさらにその後ろを着いて行った。
一階の職員用トイレの前で、周囲を伺うように左右に視線を巡らせる。
すばやく物陰に頭を引っ込める元譲&光也。
そして、誰もいないことを確認すると、ソアラは男性用に入っていった。
「おっしゃぁっ! 決定的瞬間じゃコラァッ!」
「で、どうするつもりなの・・・あ、元譲?」
走り出す元譲、トイレの中に入ると、個室の扉が一つだけ閉じていた。
「ふっふっふっ・・・職員用トイレを使うとは姑息なマネを、だが・・・ここまでだぜぇ、天野ぉ・・・」
パキポキと指を鳴らす。
「おらおらおらおらっ! 出てこんかこのオカマ野郎! テメェの正体はサクッとマルッとグルッとお見通しだコラァッ!」
ぼかばきぼかばきぼかばき
扉をこれでもかと言うほど殴りまくり蹴りまくる。
それだけではない、トイレットペーパや掃除用ブラシ、果てはサンポールまで投下し、容赦のない攻城戦を仕掛ける。
やっていることまで小学生であった。
そして、とどめとばかりにバケツに水を溜め、最後の一撃をかまそうとした時、光也がおそるおそる声をかける。
「げ、元譲・・・」
「止めるな、光也。これは、在りし日の雪辱を晴らす聖戦なんだ!」
「いや、そうじゃなくて・・・」
口端をヒクつかせながら指を指す。
「ん?」
その指の先には、トイレの窓、そして外にはソアラがニコニコと笑いながら手を振っていた。
「・・・・・・・・・え?」
それに気づくと同時に、ぎぎぎぃっと音を立て扉が開く。
「お前・・・B組の夏河だな」
そこには、まるで海で溺れた平家の落ち武者のようになった、体育教師水口宏一(42)がいた。
「え〜と・・・」
掲げ持っていたバケツから水がこぼれ、頭から被る。
「とりあえず、職員室こいや」
夏河元譲、三時間目欠席。
「元譲、なにやってんだい?」
「しっ! 静かにしろ」
物陰にマヌケなコソドロのように張り付いている元譲に、声をかける光也。
「今・・・尾行してんだよ」
「尾行って、誰を・・・」
答える代わりに無言で廊下を歩くソアラを指刺した。
「なに、やってんの?」
見た上で改めて問い直した。
「アイツは男だ、それは間違いねぇ・・・証拠を掴んでやる」
友人を疑うわけではないが、光也も「ソアラがおとこのこ」という話は半信半疑だった。
「確かに、ちょっと信じがたいけど。でも、どうやって調べるつもり・・・まさか!?」
一瞬、十八禁と言うか、ダイナミックプロばりに「ギャハハハハー」と叫びながらソアラの服をビリビリに破り散らす姿を想像してしまった。
「王子様だろうが、お姫さまだろうが、食うもん食えば出すもん出すだろ、ヤツが男子トイレに入った現場を押さえてやる!」
「あ、そっち・・・」
殺気に満ちた顔をしているわりには、小学生のような方法である。
「お、動いた!」
階段を降り、一人でどこかに向かい始めるソアラ。
その後ろをマヌケな探偵のようにコソコソと尾行する 。
光也もおもしろそうなのでさらにその後ろを着いて行った。
一階の職員用トイレの前で、周囲を伺うように左右に視線を巡らせる。
すばやく物陰に頭を引っ込める元譲&光也。
そして、誰もいないことを確認すると、ソアラは男性用に入っていった。
「おっしゃぁっ! 決定的瞬間じゃコラァッ!」
「で、どうするつもりなの・・・あ、元譲?」
走り出す元譲、トイレの中に入ると、個室の扉が一つだけ閉じていた。
「ふっふっふっ・・・職員用トイレを使うとは姑息なマネを、だが・・・ここまでだぜぇ、天野ぉ・・・」
パキポキと指を鳴らす。
「おらおらおらおらっ! 出てこんかこのオカマ野郎! テメェの正体はサクッとマルッとグルッとお見通しだコラァッ!」
ぼかばきぼかばきぼかばき
扉をこれでもかと言うほど殴りまくり蹴りまくる。
それだけではない、トイレットペーパや掃除用ブラシ、果てはサンポールまで投下し、容赦のない攻城戦を仕掛ける。
やっていることまで小学生であった。
そして、とどめとばかりにバケツに水を溜め、最後の一撃をかまそうとした時、光也がおそるおそる声をかける。
「げ、元譲・・・」
「止めるな、光也。これは、在りし日の雪辱を晴らす聖戦なんだ!」
「いや、そうじゃなくて・・・」
口端をヒクつかせながら指を指す。
「ん?」
その指の先には、トイレの窓、そして外にはソアラがニコニコと笑いながら手を振っていた。
「・・・・・・・・・え?」
それに気づくと同時に、ぎぎぎぃっと音を立て扉が開く。
「お前・・・B組の夏河だな」
そこには、まるで海で溺れた平家の落ち武者のようになった、体育教師水口宏一(42)がいた。
「え〜と・・・」
掲げ持っていたバケツから水がこぼれ、頭から被る。
「とりあえず、職員室こいや」
夏河元譲、三時間目欠席。