第9話 第三章「お姫さまの告白」(1)

文字数 404文字

 コイツはとにかくむかつくヤツだった。
 いつもヘラヘラと笑って、気に食わなかった。
 とにかく一度でいい、泣かしてやろうと、スキあらば勝負を挑んだ。
「天野ー!」
 朝一番、登校してきたコイツに殴りかかった。
「んがががががっ!」
「おはよう、げんじょ? 今日も元気だね」
 なにをどうされたかわからないうちに腕関節を極められ、床に組み伏されていた。
「あまのー!」
 掃除の時間、背中からホウキを振りかぶって襲い掛かった。
「ばほっ!?」
 後ろをふりかえることなく、背中越しに顔になげつけられた黒板消しに当たり、そのまますっ転んだ。
「まのー!!」
 下校途中、茂みからいきなり現れて、蹴り飛ばそうとした。
「あぼぼぼほぼぼ」
「だいじょーぶ? げんじょ?」
 いともアッサリかわされ、そのままドブ川にダイビングしてしまった。
 三百三十三戦三百三十二敗、一引き分け、悔しさとかなしみの戦歴だった。

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